夢小説【イナイレ】
気づかないふり(南雲晴矢)
イナズマジャパンのマネージャーとしての一日の仕事が、やっと終わった。
マネージャー仲間とおしゃべりをした後、合宿中に泊まっている部屋に帰って携帯を見る。
画面には"着信あり"の文字。
履歴を確かめてみると……
「南雲くん……。」
元エイリア学園プロミネンス主将だった。
彼とは雷門のマネージャーとして、エイリア学園と戦っていた時に出会った。
敵どおしだったが、ダイアモンドダストの試合を見に来た時などに、私がちょっかいをかけに行っていて……。
いじりやすそうで、面白そうだったからだが。
その後しばらく会っていなかったが、エイリア学園との戦いが終わって、お日様園に瞳子監督に御礼をしに行った時に再開、色々話していたら仲良くなった。
仲良くなってからは、一緒にサッカーしたり、遊びに行ったり……そして時々涼野さんがいたりいなかったり。
「かけ直した方がいい……のかな?」
携帯を片手に合宿所を出る。
何か用だろうか?
電話かけてくるなんて、なかなかない。
いつもメールでやり取りしているから。
"プルルル……"
呼び出し音が鳴る。
二三回呼び出し音が聞こえた後、
『理緒?』
南雲くんの声。
「うん。電話かけてくれてたみたいだったから、かけ直したんだけど……。どうしたの?」
『あー……その、今何処にいるんだ?』
なんでその質問?
「イナズマジャパンの合宿所。マネージャーになったことはメールした……はず。うん。」
独り言のような感じで答える。
『合宿所って雷門中だよな?今近くにいるんだけどさ……少し会えないか?』
突然どうしたんだ。
ヒロトじゃあるまいし。
……別にいいんだけど、会えるの嬉しいから。
……あれ、何で嬉しいんだろ?
……好きだからか。
あ、別に恋愛とかじゃなくて友達として!
……って私何で質疑応答して一人で慌ててるんだ。
『理緒?』
ずっと黙っているのを不思議に思ってか、南雲くんが私の名前を呼ぶ。
名前を呼ばれたことで我に返り、考えていたことを振り払った。
「え……あぁ、うん。いいよ。でもあんまり遠くに行けないけど……心配かけるから。」
『なら雷門中の……宿舎と反対側の門とこに俺が行く。』
「わかった。」
電話を切って約束した場所へ向かう。
その途中ふと疑問が過ぎった。
……なんで南雲くん、雷門中の校内配置知ってるんだろ。
宿舎を知ってるってことは最近来たってこと?
うーん……
考えてもわからないか。
思いにふけっていると、
「こっちだ!」
声が聞こえてそちらを見る。
手を振っている南雲くんが見えたので、走り寄って行った。
意外と来るのが早い……本当に雷門中の近くにいたらしい。
「こんばんは。……なんか珍しいね、会えないかって聞いてくるの。」
「"たまたま"近くに来る用があったから、な。」
どや顔で言われても……。
"たまたま"近くに来たからといって呼び出すものなんだろうか?
つっこまないけどね。
「私に用があるんじゃないの?」
「用がないとお前に会えないのかよ。」
上から目線で言われた。
こういうとこ、なんか好きだ。
可愛い。
「そんなことない。会いに来てくれるの嬉しいし。」
うん、私さっきから何言ってるんだろ。
熱でもあるんだろうか……自分でいうのもどうかと思うけど。
「なっ……////よくそんなこと平気で言えるなっ////」
そういうと視線を外されてしまった。
自分でもよく言えたなと思ったけど……まぁ、素直な気持ちだから。
しばらく南雲くんが何も言わないので首を傾げてみる。
「「……。」」
えーと……。
「俺、韓国の代表チームに入った。」
いきなり口を開いたのでびっくりしたが、それ以上に彼が言った言葉に驚いた。
「入ったって……え!?韓国の代表としてトーナメントでてるの?」
次のイナズマジャパンの対戦チームじゃないか。
「あぁ。」
投げやりな返事。
「そうなんだ……ってそれを伝えにきたの?敵どうしなら会わない方がよくない?」
頭の上に疑問符を浮かべてみる。
「そ、それだけじゃねぇ!!てかもう少し驚けよ……。」
そう言ってため息をついて、しばらく間を置いた後、ふと真剣な表情になった。
「今日は理緒、お前に直接言いたいことがあって来た。」
急に真面目な態度になったので、思わず身構えてしまう。
「な、何ですか?」
負けてほしいとか言わないよね……。
「なんで敬語になるんだ?……まぁいいか。」
「……。」
彼は心を落ち着けているように見えた。
何を言おうとしてるんだろ。
大事なことなのかな?
恐る恐る彼の表情を伺っていると……
「次の試合、韓国が勝ったら俺と付き合え。」
いきなり肩を掴まれ、真っ正面から言われた。
言われた言葉にも混乱していたが、まず彼が近いことに動揺した。
「な……南雲くん、なんか近い……/////。」
そう言うと彼は、はっと私の肩を離し、一二歩さがる。
「わりぃ……。」
心臓の鼓動が早い。
取りあえず落ち着かなければ……。
「本気なの?」
「当たり前だ!!」
真っ直ぐで真剣な表情に圧倒されてしまって、言葉に詰まった。
「な……んで?」
そう聞くと、彼は顔を真っ赤にして右手で額を抑えた。
「…………そんなの好きだからに決まってんだろ。」
風が吹き抜けて私の髪を揺らした。
「……嘘だ。」
視線を落とした。
からかってるんだ、きっと。
そんなことを思っていると……
「だから嘘じゃねぇ!!」
彼はそう言って乱暴に私を引き寄せ、抱きしめるような形になった。
驚いて顔を視線をもどすと、南雲くんの顔がすぐそばにある。
驚いて離れようと身を引こうとしたが、相手の力が強い。
「逃げんじゃねぇよ。」
耳元で囁かれると体の力が抜けた。
「返事聞くまで離さねぇからな。」
本当に離すつもりは無いんだろう。
私を拘束している腕からそんな感じが読み取れた。
早鐘のように打つ心臓、それとは反対に今の状態で感じる安心感。
本当はわかってたんだよ、南雲くんへの気持ち。
ただ認められない自分がいて……。
彼への"好き"は友達へのそれじゃない。
ずっと認めなかったけど、こんな気持ちにさせられたら認めるしかないじゃないか。
「……わかった。いいよ。」
私が言うと、彼は凄く嬉しそうな表情で"よっしゃ!"と小さく言った。
「でも韓国には負けないよ?」
私はやわらかい微笑みを浮かべる。
「韓国は絶対負けねぇ。」
自信満々だ。
イナズマジャパンだって強いんだからな。
「じゃあ韓国が負けたら私の言うこと聞いてくれる?こっちが負けたら付き合うって条件なら、それで平等かと。」
「なっ……!!」
驚いてるみたいだけど、そっちが先に言ってきたんだから。
「何を言うつもりだ……?」
「聞くってことは勝つ自信ないの?」
我ながら性格が悪い。
「そんなんじゃねぇよ!!……でも……。」
「?」
「やっぱり勝敗関係なく俺と付き合え!」
色々無茶苦茶……。
最初に自分で言い出しといて。
「勝つ自信ないのか……。」
「だから違うって言ってるだろ!」
彼らしい。
少し拗ねてる南雲くんを見ながらそう思った。
「いいよ。」
彼に向かって言う。
「勝敗で決めたら韓国は日本に勝つとはこっちのマネージャーとしても思いたくない……でも私、南雲くんのこと好きだから……。」
なんと言葉を続ければいいかわからなくなった瞬間、
「!?」
抱き寄せられたかと思うと、唇を塞がれた。
時間が止まったように感じた瞬間だった。
別れ際。
「あーっ!何で俺悩んでたんだ!両想いなら遠回しなことしなくてもよかったのに!」
彼はそう言って笑った。
「なんでもいいけど……付き合うのは次の試合終わってからね。」
「あぁ、わかってるよ。」
それまではお互い敵どうし。
「じゃあまた連絡するから。」
「うん。」
彼は片手を上げ、走っていった。
しかし、50メートルぐらい離れた所でこちらを振り返った。
なんだろうと思ったら、
「次会う時は晴矢って呼べよ!!グランのことは名前で呼ぶのに、彼氏の俺が苗字で呼ばれるのは嫌だからな!!」
そう叫んだ。
その後はもう振り返る事なく走り去って行った。
恥ずかしくて真正面からは言えないけれど、
私は貴方が大好きです。
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