愛抑止@

 軍医タコは、廃校舎から今度は破華姉ぇと尻目を連れて、校長室へとやってきた……校長先生は制服姿の女子生徒の愛人を膝に横座りで乗せてキスを続けている。
 女子生徒の愛人はキスだけでイキっぱなしになっていた。

「んんんッ……んんんッ……んんんッ」 呻く女子生徒は恍惚とした表情で、ビクッンビクッンと痙攣するたびに校長の膝の上でイク。
 女子生徒の唇は校長先生によって性感帯開発されて、キスだけでも絶頂する体に変えられている。
校長に軍医タコは質問する。
「現在、廃校舎の施錠管理をしているのは誰ですか? 裏口の鍵を保管しているのは?」
「それなら教頭だ、そうだな教頭……チュッ」
「はい、わたしが責任を持って、廃校舎の施錠管理をしています」
「廃校舎の鍵が今、手元にありましたら見せてくれませんか?」
「いいですよ……こちらへ」
 教頭は隣の部屋へと軍医タコたちを案内すると、ダイヤル式の手提げ金庫の中から先端が『У』型になった鍵を取り出して見せた。
「廃校舎の裏口は、施錠してから一回も開けていない」
「なるほど……ところで、裏口には錠前が取り付けられていた痕跡がありますが……なぜ、今の特殊な鍵に変えたのですか?」
「廃校舎に忍び込んだ女子生徒の死亡事故が一年前にあってから、簡単に侵入できないように鍵を変えた」
「その死亡した女子生徒は、どうやって自分で錠前を外して廃校舎に侵入できたんでしょうね?」
 軍医タコの質問に途端に不機嫌になる教頭。
「知るか……屋上に繋がる階段の最上段から、足を滑らせて落ちて死んだ、露出狂の下着女子生徒の行動など理解できないからな」
「それはそうですね……この特殊な鍵は一つだけですか?」
一つだけだ、外からかける鍵は外部侵入者を防ぐモノだからな! 他に質問はあるか! わたしは忙しいんだ」
「いいえ、別に」
 軍医タコは意味ありげな薄笑いを浮かべた後、尻目と破華姉ぇに言った。
「お二人にはご足労ですが、町でヒーローもどきをしている男子生徒を探し出して連れてきてください。亡くなった幽路と最後に寝た男を探しているはずですから……わたしはテントに一人で待っていますから」
 教頭は軍医タコを冷たい目で見た。


 夢の中で騎竜は自宅の自分の部屋でベットの上で膝を抱えて座っていた……階段の下の方から母親の、自分を呼ぶ声が聞こえた。
「騎竜、夕ご飯できたわよ。下りてらっしゃい」
 母親の声に続いて、父親である校長の愛人をやっている。クラスメイトの女子生徒の声が聞こえてきた。
「騎竜くん、一緒にご飯食べよう」
 騎竜はさらに強く膝を抱える。
(一緒に食事なんかできるワケないだろう……同じテーブルに父親と母親と、父親の愛人のクラスメイトが同席している食卓で、食事なんかできるワケないだろう)
 騎竜は夜毎、父親と母親の寝室で愛人のクラスメイトを加えた三人の喘ぐ淫らな声を聞かされていた。
 翌朝になれば、何事も無かったように洗面所で歯を磨きながら「おはよう、騎竜くん」と挨拶してくるクラスメイトや、朝食の支度を普通にしている母親が騎竜には耐えられなかった。
(こんなの異常だ……クラスメイトが父親の愛人で、同じ屋根の下で母親と仲良くやっているなんて……愛などいらぬ)
 いつの頃からか……騎竜は愛そのものを憎むようになっていた。


 廃校舎の隅の二階教室で、机に顔を伏せて眠っていた騎竜は目覚めた。
(また、家族の夢を……)
 暗幕カーテンを引いた教室には、カップ麺の空容器や空のペットボトルが転がり、近くの机に置かれたモニターには分割画面で裏口に設置した監視カメラの映像が映っていた。
 教室に持ち込んだソファの上には、寄り添うように眠る双子の姉妹。
 騎竜が手下として使っていた、三人組の男子生徒は一人が軍医タコに捕まったので、暗示で廃校舎と【対価】に関する記憶を除去して解散させた。
 騎竜はスマホにメールが届いているのに気づく。
 届いていたメールの文面を見た騎竜は立ち上がると、ソファの双子姉妹に近づいて言った。
「起きろ、今タコがテントに一匹だけでいるそうだ」



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あきゅろす。
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