【アナザー・エデン】B 男女貞操観念逆転の『フツーノ国』

 タコ型小型宇宙船を結晶港の駐車場に預けた軍医タコ一行は、破華姉ぇの提案で蒸気機関車で【アナザー・エデン】を移動するコトにした、海岸線の線路を機関車の客車に乗っているのは。

軍医タコ
破華姉ぇ
尻目
天狗裸女

プラスチックのボックス容器に詰められ、網棚に乗せられた荷物扱いのナマモノ〔隊長タコ〕の五人とナマモノ一個だった。

 向かい側の座席に座っている、破華姉ぇに軍医タコが訊ねる。
「時に、破華姉ぇさんには弟か妹がいませんか? 西洋甲冑を着込んでいるような姿の」
「んっ……なんでわかった? 人見知りで裸体に甲冑着ている妹が一人いるけれど……そんなコトより『生命の粘土』をゲットするためには少しばかり国や町を通過しないといけないからね……普通の国や町だから安心して」
「普通の国……ですか、ちなみに最初に行く場所はなんと言う場所ですか?」
【フツーノ国】……男女の貞操観念が逆転した普通の……女が男に対して強い性欲を持っていて、男性が女性の性欲対象になっている国

「それが普通……ですか、ふむっ」
 軍医タコは取り出した端末タブレットで。オークションサイトを確認すると、裸体に一本歯の高ゲタを履いて、ヤツデの葉ウチワでパタパタと扇いでいる天狗裸女に言った。
響子のマン毛を混ぜたミサンガが落札されています……タコ型宇宙人の科学力を使えば、落札した相手の住所くらい簡単にチョチョイと……天狗裸女さん、この住所にいる響子の恥毛入りミサンガを購入した人物の『天狗の神隠し』をお願いできませんか……下の世界にいる人物ですので」
 天狗裸女は高い鼻を擦りながら、うなずく。
「承知した」
 走る客車の窓を開けた天狗裸女は、裸体を外に乗り出して、片足のゲタの一本歯を窓の枠にかけて張ったヒップを軍医タコたちの方に向けると、尻骨から生えたカラスの尾羽と肩甲骨の翼を広げて外へ飛び出し、軍医タコがタブレットで見せた『裸族人類が存在する退屈でない世界』の住所を目指して飛んでいった。

 冷凍ミカンを食べながら尻目が不思議そうな顔で、軍医タコに質問する。
「響子さんの恥毛が混入されたミサンガを、持っている人物を連れてくる理由がわかりませんけれど……それなら『どこでもホール』を使えば簡単に、連れてこれるのでは?」
「尻目さん、確かに『どこでもホール』は便利なアイテムですが、その便利さに頼っていては堕落します……今回は『天狗の神隠し』以外にも天狗裸女さんの能力が必要なのです、もちろん尻目さんの力も」
 そう言って軍医タコは、海岸線の車窓を眺めながら駅弁のフタを開けた。


 男女の貞操観念が逆転した普通の国【フツーノ国】……普通の現代風建物と、普通の現代風衣服を着衣した人たちの、日本国に酷似した一見普通の国。
 駅から出て、駅前広場にいる軍医タコ一行は、ここでも往来している人たちは特別視をしていない。
 ビルの壁に設置された巨大モニターには『電車内で数年間に渡り男性を痴漢し続けて逮捕された市の女性職員』とか『ネットで知り合った未成年者の男子高校生に、金銭を渡しホテルで淫らな行為に及び男子高校生に射精させた女性教諭』とかのニュースが流れていた。

 軍医タコが破華姉ぇに質問する。
「アナザー・エデンでは、どこでもこんな感じなんですか? 洗脳電波を発信する類いは無いようですが」
「これが普通だよ、アナザー・エデンではタコや裸の人間が歩き回っていても気にしない」



「素晴らしい世界ですね」
 そんな会話をしていると、大きな布袋を両手で提げた天狗裸女が飛んできた。
「連れてきたのじゃ、ミサンガを手首に巻いている男を」
 袋を軍医タコの前でひっくり返すと、中から手足を縛られ口にタオルの猿ぐつわを噛まされた。
 十八歳くらいのブレザー制服姿の男性が転がり出てきた。
 その手首には、響子の恥毛が入ったミサンガが巻かれている。
 イモムシのように縛ら転がされた男子生徒は「うぐっ……うぐっ」と、呻く。
 軍医タコが尻目に言った。
「尻目さん、猿ぐつわと縄を外してあげてください」



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