男女貞操観念逆転国「女が男を……」@

 猿ぐつわと、縛っていた縄を解かれた男子高校生は、怯えた目で軍医タコたちを見る。
「ぷはぁ……ここはどこだ? おまえたちは何者だ? 部屋でオナっていたら、いきなり窓から天狗みたいな裸の女が入ってきて、縛られて袋を被せられた……オレをどうするつもりだ!? タコ!?」
「まぁまぁ、落ち着いてください……あなたの名前は?」
「紫郎〔しろう〕」
「紫郎、あなたがココに来たのは偶然ではありません、必然です……その腕に巻いているミサンガはどうしてネットで落札したんですか」
「それは……処女の陰毛が入っていたから……お守り用に」
「違います、あなたが落札購入した本当の理由は恥毛の女性と前世……いいえ、も一つ前の前世……さらには、もう一つ前の前世からの繋がりがあったからです……恋人とか兄妹とか親子とかの絆に引き寄せられて購入したのです。ちなみにミサンガの恥毛は、処女ではありません」
「だましたな! 処女じゃなかったのか! オレは童貞なのに!」
「怒るポイントそこですか……とにかく、紫郎にはわたしたちと一緒に旅をしてもらいます……あなたに拒否権はありません、これがなんだかわかりますか」
 軍医タコは紫郎に、タブレットにインストールした魂の形をしたアプリを見せた。
「…………?」
「これは、ミサンガに入れた恥毛の女性が眠っている時だけ、あなたの肉体に心を移すアプリです」
「それって、男女が夢で入れ替わるっていう例の……」
「違います、入れ替わるのは相手の女性のみです……紫郎の意識は底に沈みます、相方の名前も絶対にわからないようにして。いつの日か街ですれ違ってもYour Name?なんて言わせません」
「理不尽だ! オレの方にはなんのメリットもないじゃないか! 知らない女に勝手に体を使われ……」
 軍医タコがアプリを「ポチッと」タッチして起動させる。
 途端に紫郎の雰囲気が、なよっとして女性っぽく変わる。
 口元に軽く握った手を当てて、キョロキョロと周囲を見回していた紫郎が女性口調で言った。
「アレ? あたし自分の部屋の机に顔を伏せて寝ていたはずなのに? ここはどこ? あっ、軍医さん。秋のご主人さまも一緒ですか」
 響子の心が入った紫郎が膝に両手を添えて、秋に向かってペコリと頭を下げる。
 秋をこの時、クラゲ軍医から言われた言葉を思い出していた。

《響子に誕生日プレゼントのコトを秘密にするのに加えて、タコの軍医から響子を『操りモード』にしないように釘を刺されたにょ……どうせタコ軍医のコトだから、念には念を入れて秋が響子を操れないように画策してくるにょ》
 確かに男の体に入った響子には、手を出すコトはできない。
 響子は、自分の体を不思議そうな顔で服の上から撫で回す。
「これ、男性の体ですよね? 誰なんですか?」
「響子は知らなくてもいいです……これは、正常に心が移るかのテストですから元にもどしますね」
 軍医タコがアプリを切ると、うつ向いた紫郎が震えながら呟いた。
「今……オレに何をした……意識が吹っ飛んだぞ……いったいオレの体に何が起こった!!」
「知る必要はありません……これからは、チョイチョイ意識が吹っ飛びますので」
「ふざけるな!」

 その時、軍医タコ一行に話しかけてきた人物がいた。
「あんたたち、面白いな……良かったらうちに来ない?」
 見ると制服姿でスタジアムジャンパーを着た女子高校生が、ガムを噛みながら立っていた。
 謎の女子高校生が言った。
「あたしの名前は銀子……仲間内からはギラギラ銀子って呼ばれているけれどね……あんたたち下の世界から来たんでしょう、泊まる場所が無かったら、うち来ない……結構広いから二〜三泊はできるよ、家には両親旅行中で、あたし一人しかいないから」
 思いがけない銀子からの宿泊誘いに、少し思案した軍医タコは銀子の申し出を受けるコトにした。

 この時、銀子がまるで性欲を持て余した若い男のようにギラギラとした欲望に満ちた目で紫郎を見ていたコトに軍医タコは気づいていた。



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あきゅろす。
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