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3日目。












1日中運転していたからか、結構熟睡して夜目を覚ますことがなかった。


だからか。
だから、良く分からないが何故か男と一緒に寝てるのか。思い出せん。
いやいや、昨日もお酒はそこそこでソファで寝たよ、わたし。男はベッドに押し込んだのだが、どうして目の前にニヤついた顔があるんだ。
寝起きで不機嫌なわたしはいつの間にかソファに来たらしい男に辟易する。
安眠の邪魔をするな。ニヤつく顔に苛立って、身体を反転させると後ろから抱き込まれた。



『眠い…』
『寝ていい。何もしない』



抱き着くのは何もしないのうちに含まれるのか。眠いわたしは考えるのが億劫で、男に背を向けることでちらっと時計が見えた。まだ4時前の様だ。道理で眠いはずだ。
それにしても、ソファってこんなに広かったっけ。
嗚呼、もう考えるのめんどくさい。



『…おやすみ、』



返事はなかったけれど、更に抱き込まれた様だったがもう意識は夢の中だった。














そんな、夜の事など一切覚えていないわたしは、朝、見知ったはずの天井を見。
そして身動き出来ない原因を振り返って見。
抱き込まれた体勢のまま自分の身体を見、着衣が乱れてないのに安堵する。
そして、寝ているらしい男に盛大に肘鉄をお見舞いしてやった。


3日目は同じベッドで目が覚めました。






『生娘じゃあるまいし、何怒っている』
『…』
『ベッドに運んだのの何が気に食わん』
『…キミがね、初めて善意を持ってくれたのは嬉しいんだけどね』



男も不機嫌丸出しで、寝苦しそうだったのでベッドに運んでくれた様だが何故怒られるのか心底解らないという顔をしている。
善意を抱いてくれるのは嬉しいのだが、姫抱っこされたらしい。29歳の仮面女といわれるわたしにはキツイものがある。意識がなくて覚えていないのがマシなのか、なんなのか。
夢見ることを捨てた仕事一直線の女にはときめきより己の体重を体験させてしまった羞恥の方がデカい。


くっそう、年下の癖にやることがマセている。
苦々しい気持ちで朝食をテーブルに置くと、頬杖をしていた男は嫣然と笑う。



『手を出さなくて、不服か……、冗談だ』



目の前のフライパンを掲げると、男はニヤニヤした顔で両手を軽く上げた。
白旗を上げている様だが態度がデカくて、反省しているようには見えないが突っ込むのも面倒臭くて盛大な溜息を吐いた。



『…一応、気を使ってくれてありがとう。キミなりに善意を持ってくれたのには嬉しいよ(初めての善意だし)』
『……抱き心地は悪くない』
『(前言撤回!下心だった!)』



連日出かけたことになるので本日は予定をたてていない。
この居候の男が現れて、夜は必ず持っている会社の資料やら英文やら文庫など読破されてしまった。日本語の本はまだ読めないらしいが英和辞書を今朝渡したからそのうち手を出しそうではある。


朝から何もないと伝えると、そうかと言って部屋から本を取り出してリビングで読み始めてしまった男を尻目に掃除機を掛ける。シーツのカバーも洗って、洗濯物をしてしまう。
粗方家事を遣り終え、リビングを見ると同一の体勢でまだ本を見ていた。
意外にも読書は好きなようだ。



たいして面白い内容の本ではないし、仕事で纏めた英文の書類を読破されても異世界のヒトだから別にいいんだけど家事も終わったから外にでも誘ってみようか。



『本、好きなの?』
『――嗚呼、興味深い』
『うちにある書類見てもつまんないでしょ?』
『そうでもない。面白い文献だ』
『……それはどうも』
『他にはないのか』



ですよね。
ということで、図書館に出かけることにしました。そこそこ大きい図書館は車で10分程度だ。男の事だからたくさん借りそうなので車で出向く。
ヒンヤリとした空調の効いた室内は、静かで。電子案内板を男に教えると心なし嬉しそうに検索を掛けていた。

医学、薬学、解剖…え、そういうの興味あるの。検索している本人が凄い不健康っぽいのでちょっと意外なものを見る目で見てしまった。



『…なんだその眼は』



っは、そうか。もしかしたら身体が何処か悪くて勉強しようと思ったのかもと失礼な事を考えていたら、男は憮然とした顔で言った。




『おれは医者だ』
『(マジですかっていうか医者に見えねぇ!!)…あー、えっと、ここでの本の借り方教えるねぇ…』




良く分からない居候はどうやら医者でもあることが発覚した。
ううーん、刺青だらけで人相悪い医者、ねぇ。謎な世界だ。確かに、白衣は似合いそう。



本に囲まれた男は結局閉館まで入り浸った。途中、お昼ご飯をどうするか確認するがいらないと返され、その後また文面に戻ってしまう。まぁしょうがないのでお昼は外でサンドイッチとコーヒーを飲んだ。本の借り方など説明は一通りしたから、閉館前に迎えに行くと伝えると嗚呼、としか返事はなかった。



どうやら図書館がお気に入りになった様で、明日も出かけるようです。














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あきゅろす。
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