偽り 20 「…はぁ」 「なんでため息つくの」 「………なんで俺はここにいるんでしょうか…」 さっきまで俺は図書室にいたことを思い出し、とりあえず聞いてみた。 横から、俺が運んだ、と聞こえて二度見してしまった。 「そんなにびっくりすることかな?」 「…そりゃぁ、いろいろと」 俺と身長ほとんど変わらない相良が運んだのかとか、この相良千里がこの俺を運んだのかとか…ほんとびっくりだ。 なんで俺を運んだのかと聞けば、そんなの俺の勝手じゃん、と言われ、そうですねと言うしかなかった。 それからしばしの沈黙の後、俺の腹が鳴った。俺のお腹ぁぁー。 「……」 沈黙がとてつもなく恥ずかしくなった俺は今何時かと聞いた。他の質問はなかったのか。 「今?昼すぎだよ」 あんたのお腹正確だねと言われ、ばっちりと腹の虫の音を聞かれていた。めっちゃ恥ずかしい。 ここにいたたまれなくなった俺はじゃぁ、俺失礼しますとベッドから降りて並べてあった靴を履き、ドアに向かって歩き出した。 「また、逃げる気?」 「………」 相良にそう言われ、ドアの前で立ち止まる。 「………いろいろとありがとうございましたぁぁ!」 と後ろを振り返ってお辞儀をして素早く保健室から逃げた。俺にはこうするしかないんだ。お礼を言ったのはなんとなくでそう言わないと嫌な感じがして、よくわかんなくなって、頭の中が混乱した。だから、最後に相良が笑っていたなんて気づきもしなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |