[携帯モード] [URL送信]

LOGICAL×BURST
[返信する]

By クロポン補佐官
2022-10-01 10:32:33
 




「───何をどう思考を巡らせたら、その結果に辿り着くの……??」
「えー? 優人、知らない? “○○しないと出られない部屋”とか!」
「…知らない」
 優人は至極、脱力した。…しかし──、顔を覆っていた手首を引かれ、反射的に優人がフリージアの方を振り向くと………
──ぷにっ……
唇へ触れたその感触に、優人は咄嗟の判断へと遅れた。
「──ちょっ…! 待っ…?! 本当にするなんて…!? こ、こらっ、フリージア……??!」
 カァッ、と耳まで一瞬で熱くなって。優人は感情に任せてフリージアの方へ向き直った。そんな優人の首元へと、フリージアの白くて細い二本の腕が絡みつく。
「───!!!?」
 感情のまま、フリージアを怒鳴りつけようと開いたその口の中へと突如、滑り込んできた舌先に口内を探られて。優人は声にならない声を発してもがき、フリージアの腕へと手を掛けた。
「んんんんんっっ……??!!!」
男の優人がその気になりさえすれば、華奢なフリージアの拘束など、いとも簡単に振り解ける。…しかし、それが出来ないのは。厭に手慣れた彼女からのその舌遣いに、体の力が抜けてしまうから──…。
 微温く濡れた舌先に口内を丹念なまでに犯され、条件反射で止めていた呼吸に限界がきて、そこでやっとの思いでフリージアの肩を掴んで引き離した。…目眩がする。
「えへへへ。優人、キスするの、下手くそだねぇ〜(笑)」
無邪気に笑って眉尻を下げるフリージアを、息を切らせて恨めしげに優人は彼女を睨めつけた。
「…こ、こんな不躾な事って………ある??」
「気持ちよくなかった?」
「そうゆう問題じゃ……」
「あ。気持ちよかったんだー。やったぁ〜」
「フリージア…!!」
彼女と正面から向かい合って説教の言葉を頭の中、目一杯に並べ立てる。
「………キスが下手って。…そんな。イノセさんを基準とかにしてるなら、僕に勝ち目なんて……そんなの、ある訳なくない……???」
(違うよ──! そこじゃないだろ、突っ込むとこ…!!)
「……もう、此処から出る方法、今から考えるから。少し、大人しくしてて───」
 フリージアを抱き上げると自分の上へと座らせて、優人はギュッとフリージアを正面から抱き締めた。
「…うん──、」
「はあ〜……」

 ──解決策は…、依然として見つからない。








「───おい、ミラ。何してんだ。虚像の間(こんなとこ)にコイツら連れ込んで」

《…おや、主。良い所に……》
 怠そうに歩み寄ってきたイノセントは、ソファーにて眠りに就く二人を見下ろすと微かに鼻で笑った。──頭を寄せ合い、繋がれた手は恋人繋ぎときたものだ。
「何してんだよ。コイツら、本当に。こんな所で」
《主の帰りを待つ内に、眠ってしまわれたようですね……》
ふーん、とばかりに。優人達の寝顔を見つめ、微かな嫉妬心と何処か満更でもなさげな複雑そうな様子を僅かに匂わす。
「…で? 面白ぇもんって?」
 普段の位置から転じ、真正面に腰を据えるミラへとイノセントは口角を引き上げ問う。ソファーに掛ける二人とそれを見下ろすイノセントを映し出すミラは、鏡面を水面(みなも)のように揺らした。
《──ええ…。とても、面白い事になってますよ………》


 

[編集]
By クロポン補佐官
2022-10-01 10:31:42
 


     * *

「───うと。ねぇ、優人…!」
「……んっ、」

 微睡みの中、フリージアに呼ばれた声がして優人はふと目を覚ました。
「ご、め……フリージア。僕、寝落ちして──…」
優人は言葉をそこで途切れさせたまま、硬直する。
「ううん、それはいいの。時間も遅かったし、私も一人でちょっと喋り過ぎた」
 此方を覗き込んで、困ったように微笑んだフリージア。辺りのキャンドルは全て消え失せ、真っ暗な空間の中にフリージアの姿だけがポッカリと不自然なまでに浮かび上がっている。
 しかし、問題なのはその後で──…。

「ふ、フリージア…? ど、どうして君……その、…は、裸なの……??」

 ペタリとその場に座り込んだフリージアは脚と脚との間に突いた腕にて、ある程度のそれらは隠れてはいるが明らかに一糸纏わぬ裸体を優人の前に晒していた。
 フリージアは恥ずかしさからと思われる赤面顔で、しかし。頬を膨らませ口を尖らし、不服そうに優人へと呟いた。
「言っとくけど、優人もだからね? ──裸なの。」
 一拍の間が空いた。
「──うわぁああ??!、何…?? 何なの、この状況……???」
優人は慌てて蹲るように身体を丸めると両肩を抱いて。それから、ゆっくりと傍らのフリージアへと視線を向けた。
「それなんだけどー。──これ、私達の“夢”なんじゃないかなぁ〜?、と思って」
「ふ、フリージア…! ちょ、ダメだって…!! 胸、見えちゃうから、それっ……!!」
 片手を顎へと当てて小首を傾げたフリージアを前に優人だけが一人、取り乱して手胡座の中へ顔を伏せるも足りずに更に顔を彼女からと背ける。
「優人、動揺し過ぎ。優人だって女の子の身体の時、お風呂だってちゃんと入ってたでしょ?」
「それとこれとじゃ、今は状況が…!! ち、違うでしょ、だって……!!」
「…う〜ん」
フリージアは少し考えた後で優人に躙り寄ると、優人の肩へと自身の背を預けた。





「“虚像の間(こんなとこ)”で寝ちゃった私達が悪い……?」
 一先ず、フリージアの裸体が視界から消えて優人は幾分、冷静さを取り戻しながら深く溜め息を吐いた。
「夢や精神世界の中でも、今までこんな事になった事なんて無かったもんね。──虚像の間…、確かに可能性としては考えられなくもないけど………」
「…ミラさん? が、私達にイジワルしてるのかなぁ──??」
「……………、」
(…それもまた、可能性の一つだけど。どうにかして元の場所に、元の姿に、戻らないと………)
優人は一人、思考を巡らせる。

 ──真っ暗な世界。空間内には自分とフリージアの二人きりで、出口の扉どころか僅かなインテリアであったテーブルやソファーらさえも消失してしまっている。例えもし、ミラが一枚噛んでいるにしても、この空間内にミラの本体である姿見の姿さえ見当たらないのだから今の自分達にどうする事も出来ないのもまた事実……。





「──ねぇ、優人。ドキドキしてる?」
「っっ…、フリージア………今はそんな事、言ってる場合じゃ──」
「フフッ…、だって優人の心音、こうしてると丸聞こえなんだもん。私、おかしくって」
「………。そこは気付いても、気付かない振りしててよ。お願いだから…。余計、恥ずかしくなるじゃん。もう……」
 優人は、完全に巡らしていた思考が途切れてしまい、恥ずかしさに顔を覆った。
「えへへ。優人、照れてる。恥ずかしい? 身体、熱いよ??」
「──だから、フリージア…。それは……」
 もう、思考がそちらに向かない…。何て危機感が無いんだろう……。
(…最悪、イノセさんが帰ってきたらどうにかしてくれるかな………)

「ねぇ、優人。キスしよっか?」

 真っ暗な空間内へと唐突に響き渡った彼女からの提案に、優人の思考は完全に停止した。


 

[編集]
By クロポン補佐官
2022-10-01 10:30:05
 
   番外編 虚像の間の幻



     *

 夜もすっかり更けた時幻党。廊下の窓から弱く差し込む月明かりにカツン、カツンと靴音を響かせるその足元を何処からともなく湧き出てきた闇が音も無く絡みつく。途端に訪れる無音の世界。視界を覆った漆黒の闇の奥、一つの如何にも重厚そうな扉がその姿を顕(あらわ)にした──。
 扉を数回ノックすると静まり返った空間にそれが反響する。…留守か、そう思ったのも束の間。ガチャン、と重い音を立てて“難解”と呼ばれている筈のその結界はいとも容易く解除され、古めかしい軋みを上げながらも扉はゆっくりと優人を迎え入れんとばかりに開かれた。──“虚像の間”は、中へと優人を無言で誘(いざな)う。

「……イノセさん?」
 中からの返答は無い。
(やっぱり、留守か……)
「お邪魔します───」
優人は扉を潜(くぐ)り虚像の間へと足を踏み入れた。



 何処までも広がる漆黒の闇をポツリ、ポツリと灯(とも)り出したキャンドルの灯(あか)りが辺りを僅かに照らし出す。いつものソファーとテーブルが暗闇の中、ポッカリと浮かび上がる。部屋の片隅にてキャンドルの光を静かに反射させている大きな姿見。空間の奥には鎖の雁字搦めな扉がこちらも音もなく腰を据えているが、その全貌まではハッキリとしない。
「………。ミラさん…? が、入れてくださったんですか?」
優人は姿見の方へとソッと歩みを進めた。
「イノセさんは……また、出掛けちゃってるんでしょうか………」
 無機質に沈黙を守るミラの前へと足を止めてミラへ軽く触れてはみるが、やはり無言は貫かれたままだ。
(…魔物も。夜は眠りに就いたりするのかな………)
 その時。物思いへ耽る優人の耳に微かな足音が扉の向こう、近づいてくるのが聞こえた。
「──!、」





「フリージア…??」
 虚像の間の僅かに開いたままになっていた扉の隙間からヒョコッと躊躇いがちに顔を覗かせたフリージアの姿に優人も、またフリージアも驚いた様子で互いに一瞬、息を飲んだ。
「優人? ──あれ…、いつの間に私またこんな所、来ちゃったんだろう……??」
戸惑った様子を見せつつも、そこを潜ったフリージアの背後にて、虚像の間の扉が今度こそ重い音をゆっくりと立てて完全に閉じられる。
「…イノセさん、出掛けちゃって──。優人を探してたんだけど優人、部屋に居なかったから。どうしようかなぁって、部屋に戻ろうか迷いながら廊下を歩いてた筈だったんだけど………」
 互いに歩み寄る二人の元で、傍らのテーブル上のキャンドル達が僅かに明るさを増した気がした。
「──掛けよっか。何だか、そうしろって言われてる気がする…」
「うん……」





「イノセさんはいつも今の時間帯って出掛けてるの?」
「んー、割とね。いつもは私は寝ちゃうんだけど、今日は寝る前に優人と少しだけお話ししたいなって思って。それで優人を探してたの」
「…ふーん。相変わらず白羅さん探しでもしてるのかな、イノセさん……」
「ねぇ、優人〜! 聞いてよ! イノセさんったら、いつも酷いんだよ? 今日だってもっと優人と私、お話ししたかったのにさぁ───!!」
 テーブル上のガラス皿から一粒キャンディーを頬張って、フリージアは優人の方を向く。自然な流れで両手を掴まれ、指を絡められて組まれて。「こりゃ、そう簡単には逃してくれそうにないな…」と優人は腹を括って苦笑を零した。


 

[編集]
[*前] [#次]
[7-9表示]
[返信する]
[新規トピ]
[戻る]


無料HPエムペ!