LOGICAL×BURST [返信する] By クロポン補佐官 2020-09-09 11:59:57 #白の檻〜鈍色の呪鎖、完結 突如の最終話。こうなるつもりはなかったんだが(笑)。 『出逢い、別れ、邂逅の日』へと続く。 …後は、無限ループ。(笑) ─────────────── ─ ─ ─ ───考えろ、最善を…。 『アンタが。第六天魔王だな──』 『…ああ?』 『俺は、齋藤薙という。氷堂を独自に追っていて、連れ去られたという彼はウチの倅の友人だそうだ。…手を組ませては貰えないか?』 『…………………、』 アイツの位置なら、俺が一番 正確に割り出せるだろう。 吉崎が居れば白羅の結界も 容易く、すり抜けられる筈だ。 アイツの身体(うつわ)の奪還を 今回、最優先事項とするとして。 白羅または氷堂が絡んでくる事を 想定すれば、まあ。願ってもない 申しつけだったとも言えるだろう。 これとない最高条件が整いつつある。 吹く風は今、こちらの味方をしている。 『……話を聞こうじゃねぇーか』 ────────…… ─────……… 『───成る程な。相手側を、逆に此方へと引き摺り出すって事か』 『白羅の干渉からはお宅らが挙(こぞ)えば、一時的にくらいは何とかなるだろう。俺的には、それで氷堂が釣れればそれでいい。火捕辺にも根回しはしてある。問題は、白羅が絡んできた時だが。まあ、優先順位は彼の奪還だろう。何事も片っ端から切り崩していかねばなるまい?』 『──くくく…、随分と頭も回ってしかも思い切りのいい奴だなアンタ。気に入ったぜ?』 『そりゃ、光栄なこったな。仕事柄にも性分的にも、思い立ったらじっとはしてられない質なんだ。思い立ったが吉日ってな』 『軽率のようで思慮深い。…お前は、何だ──?』 『形容は様々あるが。まあ、一言でいうなら“半端者”だ。よろしく頼むぞ、魔王様』 『ああ。いいぜ?』 漆黒の闇。音も無く、色も無い。 『──お前まで、出てくるとはな。安部』 『仕事が早く上がりましてね。拝見させて頂きますよ』 『好きにするがいいさ────』 愁水、真木、安部らが 向き合うようにして イノセント達を取り囲む。 鬼が出るか蛇が出るか──…。 イノセントは左手を翳した。 ………………………… …………………… …………… 某所にて───。 『春花。気持ちは嬉しいが……』 『…お願い、秋人。あまり遠くへ行かないで──。嫌な胸騒ぎがするの。だから………』 『そうも言ってはいられない───…、』 彼女を宥めて、氷堂が 部屋を出ようとした時だった。 突如とし、場を飲み込んだ静寂に 耳鳴りのような感覚を覚える。 ぐらり、と視界が暗転して 春花が手を伸ばし彼女の唇が 無音の中、自分の名前を呼んで 動いたのだけが分かった──…。 『─────っかしーな。アイツを呼び出した筈が…、お前に対する執着の方が勝(まさ)ったか…?? ──なあ、氷堂…。久しいじゃねぇーか………』 『──何をした? 魔王様よ。…えぐいメンツだな、随分じゃねぇーの』 見たくもない顔触れ…… いや、合わせる顔がないの 間違いか───。 周辺一帯を炎の結界が覆って こりゃあ、どうもそう容易くは 逃げられそうにもないか。 『…なぁ、火捕辺──。何つー顔してんだよ。お前よ………』 『それは。お互い様です───』 溜め息を吐き出す。無勢に多勢。 全くを以てフェアじゃない。 ───全部、ぶっ壊して…… ──ッッ!!、………!!!! そうするしかないだろ、こんな。 とんだ茶番だ。何一つとして笑えない。 視界の先で降り注いだ光の矢が 炎を孕んで辺り一面を焼き尽くす。 (…視野は塞いだ。逃げ道でも確保するか────、!、…ちぃッ──!!) ──ズガンッ……!! 厄介な奴が一人。何だって よりにもよってコイツまで居る……。 銃を取り出し構えるが、放つ瞬間に 奴の放った上着が視界を塞いで 玉は相手の脇を掠めたかと思うと 次の瞬間、腹に重い一発を食らった。 咳き込みつつも銃を握った拳を 相手へと振り下ろすが、足を払われ 胸ぐらを掴まれ地に強く叩きつけられる。 取り押さえられそうになってもがいて 銃を構え直し、数発を相手に放つが 眩む視界にまた玉が逸れた。 『───薙…!!』 『抗うなっつっても聞き分ける訳ないだろうからな。力尽くでいくぞ、氷堂──』 数々の猛攻も、援護する輩に邪魔をされ ロクに相手に致命傷を与えられない。 しかも、近距離戦へと持ち込まれ やりにくいったらこの上ない。 一対一ならまだしもだが、 この圧倒的不利の中で この男ととなると相性は最悪だ。 自身の瞳孔がメリメリと音を立てて 鋭利さを増していくのを感じつつ、 妙な高揚感の中で無遠慮なまでに 大技の数々を繰り出してゆく。 『──氷堂! 抗うな!! …俺らはお前に恨み辛みがあって挙ってるんじゃあない! 分からないか? 俺はさて置き、補佐が。火捕辺が。周りが何故、そこまでしてお前を連れ戻そうとしているのかを…!!』 『…うるっせぇーんだよ、──皆まで………ほざくなっ!!』 押さえ込まれ、馬乗りにすらなられて 銃を握る右手は銃ごと強く押さえ込まれてる。 コイツの握力ときたらマジにどうかしてる───。 暴れて、暴言を吐き散らして 必死に相手へと抗う。 『……言うな。聞きたくなんて、ねぇんだよ…。判ってる。判ってて、全てをやってんだよ────俺は…!!』 薙は動きを止めて、俺を見た。 ギリリと歯を鳴らすと手首が軋んで 骨が折れるんじゃねぇーかってくらいに 奴の両手に力が込められた。 何で、何で……… 他人のテメェーまで、そんな面 しやがるんだよ──!? 俺は。俺は、ただ───… 『離せっ…!!』『馬鹿野郎が!!』 強い衝撃が左頬に走って ぶん殴られたのだと 理解に一瞬、遅れた。 平手…、て。今時……。 お前は俺の何なんだよ。 他人の中の他人の筈の お前が、何をそこまで………。 『───退け…、そこをっ……!!』 揺るがすんじゃねぇ、人の意志を そうも簡単に………ふざけんな。 俺は…、俺だって……こんな事…………!! 『───もう、やめてくださいっ……!!』 薙のデカイ図体が僅かに揺れた。 背後から伸び、縋る 白くか細い腕に 奴は動きを止めた。 『…………これ以上、……秋人を、…責めないで───』 ──パァンッ……!! 緩んだ拘束を振りほどいて 両手を添え、銃を放った───。 こんな至近距離でも当たらねぇのは 何でなんだよ……………。 『……退けや、クソ野郎がっっ───!!!!!!』 春花の腕だけを取って ズタボロな身体を引き摺る。 謎の使命感に突き動かされ 過去の仲間だった奴らの 言葉や行動の数々に 胸は確かに痛んで 内に潜む闇が、また 音もなく俺を侵食してゆく………。 ぐらぐらと歪む視界、 刺さるような痛みが頭へと走る。 『──────くそっ……!!』 胸を掻き毟り、嘔吐した。 支える春花の左手に 滲む鈍色の痣が目に入った。 コイツを連れ戻しに来ただけだろ──…。 その場のメンツを一瞥し、 あの男の姿がそこに見えない事へ 僅かに違和感を覚えはしたが、しかし。 『……預かってくれ。…俺は、もう────』 色々と限界だった…。 一刻も早く、この場を脱しなければ───… そう思っていたのも束の間──。 ──ズドォンッッ………!! 普通、あり得ねぇだろ…… ボロボロの相手にそんなよぉ……… 軽く骨が今度こそ折れた気がした───。 (あり得ねぇ……っ、て─────……) 『────話が、違う…』 『…だな。』 『連れ戻すのは、アイツの身体だけの筈だったが──??』 『そうだったな』 『それが。何で───…』 ベッドに横たわる氷堂は深い眠りに就いている。 その傍らに寄り添う春花の左手甲と、髪にて隠した 左側の頬には痣が静かにその根を広げつつあった。 『──俺的には。もっと、こう…。血みどろの殺し合い?を想定してたんだがな…………こうも、あっさりと……』 抵抗されるのは覚悟の内だった。 その際には、何を犠牲にしようとも 最小限のそれには目を瞑るくらいの 覚悟はしていたつもりだった。 たまたまか奴の想定内の内だったのか 白羅はその姿を現す事はなかった。 彼女の、春花の身体の痣により 面影も何もない優人の身体が 彼女である事を一目で悟った。 彼女の抵抗は皆無で 挙げ句にまさかの……… 完 『出逢い、別れ、邂逅の日』へと、続く… [編集] By クロポン補佐官 2020-09-08 12:00:06 #鈍色の呪鎖、裏 (白蛇の巣窟) 先日の話へ加筆したので再アップ。 ────────── ─ ─ ─ ──ガラッ、パタン…… 『あ。あんべちゃん。お客さまがいらしてますよ?』 『ほう? 私にですか。それは、珍しい──』 『ヤトノカミさんって方です』 『白蛇が…?』 『あ、ハイ。そうとも仰ってました』 『……………、そうですか…』 安部は抱えていた書物らを 机の上へと降ろして 席へと着いた。 『それで? 彼は…?』 『直ぐ戻ると思いますよ?』 ──コンコンッ 『あ、ほら。戻って来た──』 ──カララ… 『お。戻ってたか。邪魔してるぜ──』 『お茶、淹れて来ま〜す』 『お気になさらず〜』 ──パタパタパタ…… 『相変わらず、忙しそうだな』 『……そうですねぇ。時には、蛇の手も借りたいくらいには』 『くっくっく、そうかよ。───おいおい、名簿も何も見られたもんじゃねぇな。よくこんなんで、お前……』 『優秀な部下が大昔に“寿退社”なされたものでね。…彼に代わる逸材はそうそう──…』 『壱ノ丞達が居るだろうが』 『彼らは貴方にしか従いませんよ。…単に、私が彼らを使いこなせないというのもありますね。玄武と二人での方が事は早い』 『んな事、言って…。───まず、名簿表(これ)を何とかしろ。何で琉球の珊瑚の魔女の直ぐ下が北欧の白原の魔導師だよ。こっちの亜剌比亜、独逸、希臘の魔女らの名簿のごちゃつきも目に余る』 『文を書くので精一杯で忙しいと言ってるでしょう。次々、新規が増えるんです。いちいち並び替えなんて真似はしてられませんよ』 『だから、仕事が捗らんのだろうが。印だ番号だ振って壱に渡せ』 『面倒臭いんですよ。無駄な労力は使いたくありませんし』 『ああ。見てられねぇな──、貸せ!』 『…おや、』 『───弐那、これを振った番号順に並び替えて清書してくれ。参南、期日の優先順位を教えろ。…肆之介、伍樹、漆夜。書物庫からこれらの語学書を此処へ持ってこい。陸月、悪いがこの卓上周辺の書物の整頓を頼む。──何、笑ってる清明! お前の仕事なんだぞ、分かってるのか────あ? オイ、この書き付けいつんだ。期限は……馬ッ鹿!? 明後日じゃねぇのか?! 壱ノ丞、筆硯一式持って来い。出来れば、お前も手を貸せ!!』 『────いやぁ〜、気持ちのよいくらい仕事が捗りますねぇ……』 『見てないでお前もやんだよ!? 玄武も呼べ、手が足りねぇ!! ──ほらっ、ぼけっとしてんじゃねぇ!! 誰の仕事だと思ってんだ、この大馬鹿野郎がっ!!』 『──しかし、どうしました? こんな所まで追い掛けて来て。“仕事の手伝い(こんなこと)”が目的じゃあなかったでしょうに………』 『当然だ。変な汗、掻かせやがって……』 『すみません。今後、気を付けますよ』 『そうしてくれ』 暫しの間が空いた──。 『……引っ越すんなら、一言ぐらいあってもよかったろ? 蛻の殻で面食らったわ』 『バタバタしてましたからねぇ、あの時期は』 『まあ、そんな所か。別にいいけどよ』 『………夜十神 白蛇。』 『ん? 何だ?』 『御夫人はお変わりありませんか?』 『ピンピンしてるよ。──ああ。以前、アイツにって預かった土産の花束、喜んでたよ。機嫌直しには確かに打って付けだった』 『…良かったではないですか』 『お陰さんでな───』 ──パタパタ 『ヤトノカミさん』 『何だ?』 『“息子さん”だと名乗る方がいらしてますが。あと、“お孫さん”──』 『…んあ?』 『──薙、か。アイツの親父にホント、よく似てきたな…』 『そりゃ、血縁だからな』 『…アイツと同じ事、言いやがるしな』 『ん?』 『──そっちが、雅か。』 『!、あ、ハイ…』 『お前の祖父さんだ』 『──“じいさん”って…、言われても……』 『やっぱ。威厳不足だな、親父』 『ほっとけ────、』 白い男はクツクツと肩を揺らす。 雅に徐に歩み寄ると上から下まで じっくりと眺めてきて フハッ、と一つ クシャリと笑った。 『───孫っつーもんは、曲りなりにも可愛いもんだな…。お前は、イザベラの血の方が強いか?』 『……?』 『…いや。祖母さんじゃなくて母親にでも似たって事か──』 『俺は、雅はアンタに似たって思ってる節があるが?』 『くっくっ──、そうか。悪い気はしねぇかな………』 咥えていた火の付かない煙草を手に取り、 それとは逆の手にて白蛇はそっと 雅の額を撫でた。 ───── ─ ─ ネタバラシ。 あんべさんの今現在のお仕事は 世界各国の魔女やら魔物やら達への 集会、会合等のお知らせ。 場所、期日、集会のあれこれを 各所へと様々な言語にて記し、届ける事。 最初はちょっとした資金集めから 始めたお仕事でしたが、もう だいぶ長い事、担っているみたいです。 玄武さんは安部さんの右腕。 白蛇さんもそれと相応でしたが 大昔に訳あって退職(笑)。 後任に七兄弟のヒバカリさんらを 置いてきましたが、安部さんったら あの有り様だったみたいです(笑)。 [編集] By クロポン補佐官 2020-09-07 15:00:03 #鈍色の呪鎖2 ゼノたんのアレは角でいいのか、はたまた耳か……。 ニュートン、悲劇のヒロイン・囚われの姫状態w でも、今回ばかしは腑抜けのニュートン(笑)。 叔父の嫌いなヒロインの図www ────────── ─ ─ ─ 『───ペテロ様。主に言いつかり、お迎えにあがりました。』 『……、お前。タナトスんとこの────』 イノセントは視線だけを彼に向け 『帰れ』とだけ吐き捨てた。 『“今は、テメェと遊んでる暇はねぇーんだ”と、テメェの主にそう伝えとけ。墨饅頭…』 小さな角を生やした片目の彼は 背中側にて両手を組み、小さく笑った。 『そうもいかないんですよね…』と 真っ直ぐイノセントへと向き 小さくそう静かに呟く。 『……聞こえなかったのかよ。出てけ、っつったんだよ。俺は───…』 『─────“鈍色(どんじき)の呪鎖”……』 『───!、』 『…ご同行、願えますでしょうか?』 少年の横へ裂いた口許から 小さな白い牙が零れた。 ………………………… …………………… …………… 奈落の底、タルタロス───。 『ははは。よかったー、君の方から来てくれて。出向く手間が省けたよ』 『──タナトス、』 使いを寄越した当の本人は ベッドの上にて完全に寛いでいて。 普段からのそれではあるのだが、 ───今日は男をその隣へと はべらかせていた。 イノセントの姿に身動いだ その少年をタナトスは胸に抱き 『大丈夫、直ぐに済むから…』と 彼の耳元へと囁いて少年を宥める。 『………、用件は何だ…』 『何だと思う?』 苛つきから、ピクリと イノセントは眉間に皺を寄せ、 ポケットへと突っ込んだ 右手を静かに握った。 タナトスは素知らぬ顔をして 葡萄酒を一つ呷ると、 グラスを置き口元を拭う。 傍らの彼を徐に引き寄せると 愛でるようにその脚や頬を撫で 人目を気にしてか、微かに 嫌がる素振りをみせた彼に 『大丈夫だって』と呟き、 自身の指を無理矢理 相手の口の中へと押し込み その舌先、口内を弄ぶ──。 『なかなか大変な事なっちゃってるみたいじゃない、そっち。暫く、覗きにいかない内にさ。…彼女を、彼に。取られちゃったんだって───?』 『………んぐっ、……んぅ────』 『余計なお世話だ。テメェには関係ねぇだろ………』 『寂しいでしょ、毎晩。最近じゃ、いつもべったりだったもんね。彼とも彼女とも。──夜は、一人で抜いてんの??』 『…………あふっ、……』 『──タナトス…!!』 完全に頭に血の上っている様子の彼を 小馬鹿にしたようにケラケラと笑ってから。 『ほら。ヒュース、ご挨拶して──?』、 そう耳元へ低く静かな声にて呟いて 胸に抱いていた少年を抱え直して イノセントへと身体を向かせた。 尚も、背後から腕を回して 見せつけるかのように、口付ける。 『───それさ。互いに縛られたら、片方をもう片方が殺さなきゃ解けないとかってやつなんでしょ? 白羅くんも底意地が悪いよね。ホント、嫌な感じ……』 『・・・・、何処でそれを知った? 他人に興味持つようなタイプでもないだろーが、お前…』 『んー。つい先日さ、“拾い物”しちゃったんだよね。俺──』 少年の肩を後ろから抱いて その肩へと凭れて視線を落とす。 『落とし主とか、探しにくるまで預かってるだけのつもりだったんだけどさ。妙に気に入っちゃってきてるんだよね、最近──。だからさ…』 『…あ?』 『早く、取りにおいでよ。俺の気が変わんない内にさ─────』 『──!!!!!?』 はだけさせられた“彼”の左肩に巣食う 見覚えの有り余った、鈍色の痣──…。 自身のソレより彼のソレは 進行がだいぶ進んでおり、 左胸辺りを中心に 首筋を駆け上り、 顎付近にまで到達していた。 『────タナトス…、テメェ……!! 一体、どうゆう………』 『誤解しないでよ。言ったでしょ? 拾ったんだって』 『嘘ほざくなっ───!!』 『嘘じゃない。此処を何処だと思ってる? ──判ってんの、ペテロ。それが、どうゆう意味か』 『───────、』 『彼、死ぬ一歩手前だったんだから───』 ……正直、ゾッとした。 冷静さを幾分、取り戻し 包帯にて隠した右手、右腕を 脈を打って痣が暴れる。疼き出す。 『感謝してよね。保護しといてやってんだからさ。──ねぇ?』 『イノセ、さっ───…』 蒼い瞳から滴が 一筋だけ、頬を伝う。 『────俺は、彼の身体の奪還に参戦までなんて干渉はしないよ? 返せってんなら、ちゃんと返すからさ。彼の身体(いれもの)、早く持っといでよ』 『死なすつもりなら、貰うけど?』 そう呟いて笑って。タナトスは、 ヒュースの頬を伝う涙を指先で拭い取り 彼の手の甲へと口付けるとヒュース越しに イノセントへと向き、うっすらと笑ってみせる。 『それまでは、飼っててあげる────』 彼の痣の広がる首筋へと口付けてから タナトスは二股に分かれた舌を そこへと這わせた。 [編集] [*前] [#次] [10-12表示] [返信する] [新規トピ] [戻る] |