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幻滅デイリー
死亡予想図7
 どうやら、俺の兄は自分の死後について心配な様だ。まあ、あの美人な妻を未亡人にさせてしまう不安はあるだろうが。しかし、いい加減に稼いでいるのだから葬祭業など辞めさせて、専業主婦にしてしまえば良い……言い過ぎだったか。とにかく、「どうしようと解らないし、困らないだろう」とは言ったが、投げやりな態度で発した物では無いと解ってほしい。これらは感情型の兄の元で培った、理論に基づいて発しているのに。しかし、同じ質問を己の妻にしてしまう俺も、やはり兄と一緒なのだなあと感じてしまった。

「もしも、俺が死んだらどうする?」
「え? やだ! 何で死ぬのッ?!」
ガシャガシャガシャ、っと手に持っていた食器を自宅の床に落とす。案の定、食器は片っ端から割れていく。
「あー……、お前という奴は……」
「病気なの?」
割れた食器を気にも留めず、駆け寄って来て恐々と俺の目を見る。どうして、こうもはやとちりをするのだろうか。俺がいなければ、きっとすぐに詐欺紛いにも引っ掛かってしまうだろう。
「違う、どこも悪くは無いさ」
「悲しいじゃない……、嘘でもそんな事を言われたら」
妻は泣きながら、崩れ落ちた。また、ベタなドラマでも見たのだろう。
「大丈夫だ、未だ死ぬ気は毛頭ないんでな」
笑うと、妻は俺を胸を力無く叩いた。

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あきゅろす。
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