幻滅デイリー 不完全だということ 「例えば、猪と豚を掛け合わせてイノブタを作るだろう」 彼は既に落書きされた藁半紙に豚を二匹描いて、片方だけに牙と釣り上がった眉(猪なのに)と模様として三本線を足す。 「猪と豚、半分半分で二分の一ずつだ」 そして豚と猪の両方の絵の端に、算用数字で分数を書き込む。 「さて、猪と豚の特徴が二分の一ずつのイノブタを元の豚に戻すには、一体どうすればいいでしょうか」 彼はエクスフラメーションマークを、勢いよく書いた。ぼくはたじろぎながらも、豚の絵を指差して言う。 「何世にも渡って、豚と配合させていけば良いんじゃないか」 「五十点。方法論は認めるが、正確な豚には戻らないのさ。イノブタと豚を掛け合わせると、イノブタブタ。つまり、四分の三が豚になる」 メンデルの法則を思い出させる様な図を描いて、算用数字で更に四分の三と書く。 「さて、ここからが重要だ。四分の四で、一になるね。しかし、ここで一にするには……」 「え」 クシャッ、と藁半紙を丸める。 「君は、マンモスの復活プロジェクトを知っているか。決して、永遠に完璧なものにはならない。解るか、いわゆる君みたいなものなんだ。限りなく四分の四には近付くだろうけど、所詮それまでの話だ」 [戻][進] |