[携帯モード] [URL送信]

幻滅デイリー
わたしの生き字引君
「あ、ごめんね、いきなり電話しちゃって」
電話越しの彼の声は、かなり上擦っていた。もしや、お風呂だったかなんて考えてしまう。慌てさせてしまったなら、悪い事をしてしまった。
「どうした?」
「あのね、訊きたい事があって」
「何? 宿題? 俺、英語は役に立たねーよ」
「うん、それは知ってるから。今更、って感じ」
すると、力の無い笑い声が聞こえた。うーん、悪い事したかな。
「で? 結局、何?」
「そうそう、諺を訊きたいの。『○○の千声、鶴の一声』の、○○に入る言葉を教えて欲しいの」
「は? そんなの、国語のプリントにあったっけか? っていうか、辞典使えば良いだろうが」
「面倒だから、速く言ってよ!」
すると、間髪を入れずに返ってくる。
「雀」
「だって、○は二つよ」
「でも、雀」
「亀、じゃなくて?」
「それは、『鶴は千年、亀は万年』と間違えているだけだろ。もしくは、『鶴亀算』とか」
「う……」
言葉に詰まってしまう。
「図星か」
電話越しの溜め息は、普段と変わらないものだった。幸せを、沢山逃せば良いのにと思ったのは内緒。



※出題 火曜放送『タモリのジャポニカロゴス』より(実話)

[戻][進]

15/31ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!