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雨の日は
バス停にて




学校を抜け出して、俺たちが出会ったバス停へと急ぐ。

 今日は晴れ。体調が悪い中、無理してチャリで来ていたので、チャリを飛ばそうとする。
しかし、後ろからちょうどバスが来ていることに気付き、すぐ近くのバス停から乗ることにした。(チャリはバス停の近くの商店に置いていてもらうことにした。)




ちょうどバスは空いていて、俺の他には2人しかいなかった。



やはりバスの中でも尚希のことを考えてしまう。


――向こうから嫌われても、俺は尚希が好きだから。泣いているなら一緒にいてあげたいんだよ。


結局、終始尚希のこと を考えっぱなしで、危うく乗り過ごすところだった。



バスがあのバス停に着き、扉が開く。
バスを下車して視線が行く先はバス停に設置された粗末なベンチに座っている尚希――



の足に付けられているギプス。そして横に置かれた松葉杖。



「驚かしてごめん。」


ギプスを見つめたまま動かない俺に苦笑している尚希。


「久志に連絡しなくなった日に部活で怪我しちゃって。」


『部活』という言葉に反応する。

尚希と中学校以来の再会を果たしたその日にも、出た単語。
でも、あの時、尚希は部活から話を逸らした。
それ以来、俺も何となく、部活を話題にすることはやめていた。


「久志には、言ってなかったけど、俺、陸上部なんだ。」


――そうだ、思い出した。
何故、中学校時代それほど仲がいいわけでもなかった尚希をすぐに思い出せたか。


コイツは中学校時代から有名な陸上選手だったんだ。
中学校最終学年で全国一位になったんだった!



 俺の様子を見て、やっと思い出してくれた? と溜め息まじりに言って、話を続ける尚希。



「俺さ、中学校時代にあんな記録出してたから、高校で凄まじいほどの期待をされてたんだ。」


そういえば、コイツの通う私立は体育会系の強豪校で……。


「高校からは、短距離に絞って、全国を目指していた。今うちの高校に短距離で良いタイムを出せるのは、俺ともう一人は、三年の先輩だけで、プレッシャーもあった。」


辛そうな顔をしている尚希。



「5月の終わりから、俺のタイムはどんどん悪くなった。人はスランプだって言ったけど、俺は違うって分かってた。」


――足に異常が出てきたんだ。


そう言う尚希の苦しげな表情。
なんで、俺は気付けなかったんだろう。


「でも、大会直前だったからとても言えなかった。コーチも普通なら気付けるだろう俺の足の異常に気づかなかった。俺に期待するあまりにみえていなかったんだ。

足の異常。皆からの期待。プレッシャー。

それらはだんだん、俺の心までもボロボロにしていった。」


こんなに苦しんでいたのに、俺は気付かなかったのか?


何が『尚希が好き。』だよ。相手のこと見えてすらいないのにそんなことを思っていた自分が馬鹿らしい。



 

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