Novel〜孕〜 18 ★ 竜の食べ物は、野菜や木の実などに落ち着いた。貧乏人には手が出し辛い生肉が好きだったらどうしようと、ひそかに心配していたので、ほっとする。 子竜がモリモリと野菜を食べる横で、昨日の夕食を食いっぱぐれていた4人も食事にすることにした。 「どこか、とっさに隠れる場所を作らないとな」 「父さんの薬部屋は?」 シャケがいう薬部屋とは、栽培した薬を乾燥させたり、粉にしたりする部屋のことだ。匂いの強いものもあるため、簡単な作りだが居間の一角を板で仕切り、ドアをつけている。 「…そこしかないかぁ。薬はどこでも作れるからな」 一応、仕事部屋だが最近は整頓しておらず散らかっていて、こちらで薬を作ることのほうが多かったので、片付ければ一時的に隠れるにはちょうどいいだろう。 「ね!名前は??」 「えーと、リューは?」 「そりゃあんまりだろ。もし外から聞かれてもわからないような名前がいいじゃないか?」 次男の提案に苦笑していると、横から「コン、コン」と音が聞こえてきた。そろってそちらを見ると、食べ終わったらしい子竜が、野菜を持っていた食器を少し持ち上げては、手を離し、音を出していた。 「食べ終わったみたい」 「頭がいいね!」 「コンコンって!」 三人が楽しそうに子竜に駆け寄る姿を見つめながら、ティラは顎に手を当てる。 「・・・コン」 「え?」 「うん、よし。名前はコンにしよう」 食器でコンコンと音を立てて知らせてきたから「コン」だと笑顔で言う父親に途端に非難が飛んだ。 「えー?もっとかっこいい名前にしようよ」 「いーやコンで決まりだ。これなら竜だなんてわからないだろ? それに短くて呼びやすい!」 「でもぉ」 自分達で名づけたかったのか、コンがあまり気に入らない子供達の頭上から、ティラは声をかける。 「なぁコン!お前もそれでいいよな」 「ギャウ」 尻尾をパタパタ振って、肩甲骨の延長のようなものをピクピクさせながら、子竜は嬉しげに飛び跳ねた。 三兄弟はその様子を見て、子竜が歓迎なのであればと納得したらしい。 「コン。よろしくね。僕はシャケ」 「イクラだよ。いっぱい遊ぼうね」 「シーマ。来てくれてありがとう」 それぞれが自己紹介して、子供達に振り返られたティラは「え、俺もか?」と少し頬を赤くする。 「あー、えっと。ティラだ。俺がこの家の長だからな!ちゃんと言うこと聞くんだぞ??」 「ギャー」 わかった!と言うようにコンと名づけられた小さな竜が元気よく返事をした。 ★ [*前へ][次へ#] [戻る] |