生暖かい血、冷えたチョコレート(ティアルク?)
TALES OF THE ABYSS/ティア
あれは…ひと?
視界が悪くてわからないわ。
あなたは誰なの?
「ルー…ク?」
徐々に回復していく視界に現われたのは彼だった。
「ティア」
出会った頃の彼では想像できないような人懐っこい笑顔で私の名を呼ぶ。
まるでその瞳に私が映っていないかのように。
まるで義務付けられた仕事をこなすかのように。
壊れたように彼は私の名を呼び続ける。
「ティア」
「ティア」
「ティア」
返事はしない。
何故なら彼が呼んでいるのは私ではないから。
私ではない、『ティア』を。
また段々と視界が晴れてきて、彼の手元が明らかになった。
そこには。
どくん、と脈打つ赤いかたまり。
「ティア」
彼は私がそれを視認するのを待っていた様で、人懐っこい笑顔をさらに気持ち悪くさせて私の目の前に突き出してきた。
「いらないわよ、そんなもの」
どうしてそんなものを差し出すの?
―それは私の心臓。
あなたが呼んでいた『ティア』は私だとでも言いたいの?
あなたはとてもにこやかに笑っているけれど、私はただ事ではないわ。
あぁ誰か。夢なら早く―…
自分のハートを射止めたルークがあどけない顔で目の前にいる→ルークへの恋心を認めたくない。
他人に自分より優位にたたれた時、自分から負けを認めるのって難しいじゃないですか。
ティアも人間だしまして軍人だから、そういう感情もあるんじゃないかな、と。
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