小説(岩男) 知らなかったんだ仕方ないだろ?【ハロウィンネタ】 今日は10月31日 どうやら人間達は『ハロウィン』という行事で盛り上がっているらしい。 ―――――――――――― ――――――――――― ―――――――― ――――― 『なんだ、ハロウィンって?』 『あ?・・・あー。なんか前に本で見たことあるな・・・。あれだ。《Trick or Treat?》とか言っておかしを貰うらしい。』 『とりっく おあ とりーと・・・?それを言えばおかしが貰えるのか?』 『ああ、どうやらそうらしい。』 『・・・よし!俺行ってくる!』 『え?!ちょ、おい馬鹿!・・・あー、行ってしまった。 仮装しないといけないんだがなぁ・・・。』 ―――――――――――― ――――――――――― ――――――――― ――――――― クイックとフラッシュの間でそんな会話が交わされてから10分が経った今、フラッシュはおかしを貰いに行っただろう兄を驚かす悪い考えを思い付いた。 読んでいた本をパタンと閉じると立ち上がり、辺りにクイックがいないことを確かめるとニヤリと悪い笑みを浮かべた。 「よし、じゃあまずは何になるか・・・だな。」 姿がなるべく分からないほうがいいんだが・・・と呟いてから、ふとそこにおいてあるシーツを見つけて「・・・またメタルか・・・。」とため息をついた。 「毎日毎日お盛んなこった・・・あ。」 フラッシュは毎晩元気な長男を思い浮かべてあきれったようにそう言ったが、ふとシーツを見て思いついた。 「……正直使いたくないが…まぁいいか。」 そういってそこに置いてあるシーツをつかみ自室へ戻った。 もちろんクイックを脅かすための作戦を準備するためだ。 「えっ…と。こことここに穴をあけ、被れるようにして…っと。」 そういってフラッシュはシーツに穴を開けていく。 「…よしっ。できた!」 そう言ってできあがったのはちょうど被れる大きさの白い穴の空いたシーツである。 子供とかがよく被って「オバケだぞー!」とやるようなものだ。 それを完成させてから次は自分の調整に入る。 「さて…まずはばれないように声を変えないとな。」 そう言って自分の接続端子を入れるところを開き、そこに自分の接続端子を繋いだ。 そして声帯プログラムが組んであるところをいじり、いつもの自分の声よりもかなり低めの声に設定し、少し声にエコーがかかるようにした。 はっきりいって、エコーをかけることができることはいじるまで知らなかったが、どうやら自分の中の空洞に響かせ自分の口から発する言葉にエコーをかけることができるようだ。 博士の技術力の賜物である。 …さて、そんなこんなで準備は整った。 あとはお菓子を貰いに行ったオニーサマを探すだけである。 「…んだよー。仮装しなくちゃいけないなんてあのハゲ言ってなかったじゃねぇかよ…くそー…でもロックや博士、メタルやエアーからは貰えたからいいか。…バブルは金とりそうだしな…。」 そんなことを考えているとき、ふと自分の聴覚センサに小さくだがクイックの声が聞こえた。 「Good timing…!」 フラッシュはニヤリと笑いながらそう呟いた。 そしてクイックの足音が自分の部屋を通りすぎて少し経った頃、フラッシュは気配を殺してクイックの後ろを付いていった。 ー・・・さて作戦開始だ。 フラッシュは心の中でそう呟いてから廊下を見渡した。 ー・・・あった・・・! フラッシュが探していたのは接続端子である。 基地にはいくつかの接続端子が設置してあり、基本的には厳重なロックがかけてあるため誰も触れようとしないものである。 だがフラッシュにとってはその厳重なロックもただの暇つぶしに使うおもちゃ程度のものだ。 そのためあっさりと電気制御プログラムまでたどり着くと、ここいら一帯の電気を解除した。 ブチッ・・・ 解除した瞬間、辺りが暗闇に包まれた。 「うわっ・・・!?なんだ・・・!?」 遠くからクイックの慌てたような声が聞こえてくる。 ーよし、ここまでは成功だ・・・! フラッシュは心の中でほくそ笑んだ。 クイックの反応が完璧にフラッシュが思った通りだったからである。 正直ここまで期待に応えてくれるとは思ってなかったフラッシュは、心の中でニヤニヤしながら次の作戦にうつった。 ・・・ックックックッ・・・ いつもの自分の声とは違う・・・まるで悪の帝王のような、低くエコーのかかった笑い声が暗闇の中で不気味に響いた。 「・・・!?誰だッ!?」 クイックは暗闇の中で叫んだ。 だが、その声が裏返り震えていることで恐怖が見て取れる。 第二段階も成功だ。 ーさて・・・ここからだ・・・! フラッシュは、クイックに見えないように暗闇に紛れながら白い穴の開いたシーツを被った。 そしていつも「うぉっ、まぶしっ!」と言われている頭部分の所に、自らを動かすための電気を微量流し、光るようにした。 それは暗闇の中で浮きあがり、まるで本当の幽霊のようだった。 それが自分のほうにゆらゆらと近づいてくるのだからたまったもんじゃない。 なのでクイックは「お・・・おま・・・誰だ・・・!?」と恐怖の表情で言った。 誰かって? 「俺はなァ・・・いわゆる死ロボってやつだ。」 「・・・死ロボって?」 「まあ・・・貴様等の言葉でいう・・・幽霊・・・ってやつ?」 「ゆう・・・れ・・・い・・・?」 フラッシュはこれからの展開を予測してクククっと笑った。 だが、そんなフラッシュの予測に反してクイックは全く動こうとしない。 そのかわり、「ゆうれい・・・おばけ・・・死体・・・」とぶつぶつクイックは呟いていた。 仕方がないのでフラッシュはクイックの耳元で一言こういった。 「treck or treat!(おかしをくれなきゃいたずらししちゃうぜ!)」と・・・。 「う・・・あ・・・あぁ!うわああああああああ!こっちくんなァァァァ!!!」 その瞬間。クイックは恐怖に目を見開き涙を溢れさせながら、叫んだ。 そして後ずさったかと思うとティウン音と同時に後ろに倒れた。 それからクイックは暗いところにいけなくなったとかなんとか・・・。 End あとがき ハロウィンのやつです。 一度消えたので、「もういい!放棄する!」とか思ってましたが、それもかわいそうなので完成させました。 ここまで読んで下さりありがとうございました! [*前へ][次へ#] [戻る] |