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PSYREN夢
その手は熱を持つ/遊坂







人に数秒間触れるって、意外と機会のないものだ

加えてあいつがさりげなく俺を避けているのを知っている

単に嫌いなのかそれとも感染を恐れてか、俺にあまり近づかない。

俺は触れてみたいけど。



呼び鈴が鳴って、面倒臭かったからタオルをかぶったまま下だけ着替えて玄関に出た。

「ぎゃっ」

ドアを開けてチェーンの向こうに見えたのはめずらしい客

「へぇ!君かい。何の用?」

「み、弥勒が電話しても出ないって」

「え?…あー」
私用で電源を切っていた。

「…遊んでたでしょ」

「あ、バレた?」

「返り血洗い流した後かなぁと思いまして」

「ご名答wま、上がってきな」

「え゛、いや、いい!」
咄嗟に拒まれる。
「なんでよ」

「……な、ない?し、死体とか…」

「は?ふっ、はっはっは!ねぇよ、ないない!」

言っても渋る名前を「アイスもありますよ」でやっと招き入れる。

「普通な…良い部屋だ…」と呟く彼女に、一体自分にどんなグロテスクを期待したのかと思いながら台所へ行く。

「なんなら換気扇の中まで引っぺがしてもらってもいいけど」
不信にうろついている名前にアイスキャンディをわたす。

まだ湿った髪を拭きながら、携帯の電源を入れ画面を開くとボスからの着信の羅列。面倒臭いと思いながらその番号に発信する。

「……あー弥勒。……悪いな出られなくて。………ああ、それで……」

電話しながら、向こうの部屋に居る名前が目に入る。

なんだかんだ言ってソファに座ってアイスをかじりながら、ちゃっかりTVのリモコンを操作している様子がなんだか可笑しかった。
TVを見ながら笑っている姿が可愛いなーとか思っていたら会話が途切れていたらしく、弥勒に『おい、どうした?聴いてるか?』と注意される。


電話が終わりシャツを着て居間に戻ると、名前はけたけた笑っていた。
「私このお笑い好きー」
「…世界終わったらお別れだぜ?」
名前の隣に腰掛ける。
触れることのできるこの距離に彼女が僅かに反応したのがわかった。

「まぁそうだけどさ…別にいいよ。遊坂さんはこの世から無くなってほしくないものって何?」

「んー……人間かな。」

「人間?意外……あ、殺せなくなるから?」

「ぴんぽーん☆わかってんじゃん」

「うぇー。悪趣味ー。」

「お前も新世界生きるの飽きたら俺に言いな。一思いに殺してやるからさ」

「フライングしないか心配だなぁ」

「信用ねぇな名前ちゃん……なァ、何でそんなに俺のこと嫌いなの?」

「え゛、別に嫌いじゃあないけど…」

「嘘つけよ、パーソナルスペースって知ってるか?無意識でも俺のこと避けてるんだよお前」

名前はアイスの棒をくわえたまま少し考えてから
「……だって、おっかないし…」

「へ?はっ、おっかないって?何が」
「全部!」即答されて余計に可笑しくなる。

「そんなんでよく今日うちに来れたな」

「弥勒にジャンケンで負けた」

「ははっ、でも快適だろ?」
「まぁね」

「名前ならいつでも来ていいぜ。まぁ安心しろよ、お前殺る気はねぇから。貴重なCURE使い殺したらボスに怒られちゃうからな」

「そういう問題ですか…;」

「まぁ、でもそんなに期待してくれるんなら」

俺は名前の手を勢いよく掴んだ。

「1…2…」

「ぎゃ―――っ!!!」

「はははは!ちょ、嘘うそ!ウソだって暴れんなって」

どさくさに紛れて抱きしめたりして

「うそー!それがうそー!!」

予想以上にテンパる名前を宥める。
こういうところが可愛いからいじめたくなる。

「殺されるより…お前はもっと違う事心配しとけよ」

「え゛、何」

「俺でも貞操だけは保障できねぇからな」

「ん゙?」

「女の子が一人で男の部屋にいたら危ないよって話」

「…………ぇ」

ぽかんとした表情に若干呆れながら、ソファから立ち上がる。

「あーあ…腹減ったな。飯食いに行こうぜ、何食べたい?」

「…あたし食欲ない…」

「とりあえず付き合えよ、なんならお手々繋ぎましょうか?」

茶化して手を差し出すと名前は幼い子供のようにむくれた。

「弥勒にいじめられたって泣きついてやる」

「ははっ。あ、テレビ消せよ」

このガキ、どこまで鈍いんだか

そのうち本当に食ってやろうか

俺が手握っただけでひとまず満足なんて

どれだけ慎重なんだろうな




end.


―――――――――――――――――――
割とまともな遊坂さんを書きました。←
実際どうなんだろうな。




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あきゅろす。
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