PSYREN夢 背中/グラナ たったったったったったったったっ… 見つけた後ろ姿めがけて走る 「グラナぁぁあああ!!」 「おっ!?」 おもいっきり踏み切って飛びかかる。 どんっ グラナは私をふわりと抱きとめた。 「なんだぁ名前。どうした」 「散歩しよーおんぶしておんぶ。」 気づけば定期的になっていたそれを、彼はいつも何て事なさそうに応えてくれる。 「ほいよ」 私を軽々持ち上げて肩に乗せる。 「ぎゃっ。高っ。ほっほー……あれ?これって肩車じゃん」 「ん、間違えた」 そう言って私を下ろす。私がまた後ろに回りこんで、しゃがんだグラナの背に跳び乗る。 「相変わらず高いなぁグラナの景色は」 「下向かなきゃお前は見えねぇな」 「そんなにちっちゃくないよ!私まだ身長伸びるんだから、いつかグラナ追い越してやるからね」 「ん………それでいいのか?お前;」 「いや不可能だからさ、真面目に考えないでよ」 同じ景色がどこまでも続く代わり映えのしない世界で、たわいもない会話をして暇を紛らす。 「最近眠れなくてさー。なんかいい快眠案ない?」 「日中走り回ってりゃ疲れて眠くなるだろ」 「んー、そだなーライズの修行でもするかな」 「ライズはお前得意だろ。バーストがいいんじゃねぇか?」 「んじゃバースト。グラナはおんぶ係だから、ドルキにでも頼んで教えてもらおうかな」 「おんぶ係ってどうなんだ…」 「おんぶ係の地位は高いよ。優待付きにしてあげる!何がいい?」 「優待っつってもなぁ…肩でも叩いてもらうか」 「いいよ。そのうちね」 グラナの背中は暖かい。 心がほわりと落ち着いて安心する。 この体勢だと少しじゃまなぼさぼさの髪の毛も 耳をつけた背中から響いて伝わる低い声も 全部好き。 かけがえのない時間。 少し贅沢を言うなら、理不尽で汚れたあの世界でこの温もりが欲しかった。 考えたくもない遠い過去を消し去って、この荒廃に在る今。記憶なんて失くなればいいのに、時々出てきては私を苦しめる。 紛らす術もない、生きる目的もないようなこの世界に気が遠くなることもあるけれど 前よりはマシだから、これでいいと、自分にいつも言い聞かせる。 不安を忘れるためには、これが一番良い。 「ん……名前?」 気がつけば、くぅ…と聞こえてくる寝息。 「ったく…」 名前には、安定した中に時々揺らぐ脆さがある。 人間というのは弱い。だから無意識に当たり前に他人を求めて生きている。 名前が時々こうして俺のところに来るのも、そういうことなんだと思ってる。 その時俺はいつも、自分がその役目になれていることに安心する。 やはり俺はまだ、俺の中に人間らしさを求めているんだろうな 元々普通の人間として生きていた名前にとって、この変わり果てた世界はどう映るのか こいつの不安は理解してやれないが、背中ならいくらでも貸してやるつもりだ。 それが俺にとっても、生きている実感になるから。 end. 10.11.21 [*前へ][次へ#] [戻る] |