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PSYREN夢
白く紛れて/ウラヌス



「ね、お散歩しよ」

指差したのは繁華街。

「いやだ」
彼は即答。

「いいじゃん。冬なんだよ?」

「………」

「よっしゃ03号!出動じゃ」

返事も聞かずに03号の手を取って、ビルの屋上からふわりと駆け出す。

街はもこもこ暖かそうな格好をした人で溢れている。
マフラーもコートもイヤーカフも、この季節は必需品とも言えるもの。
特に今日は真冬並の寒さで、私も手袋をしっかり装備してきた。ハイネックだからコートだけでいいやと思ったけど、外を歩くとやっぱり、彼のマフラーを奪い取りたいくらい。

「人込みは嫌いだ」
03号はぼそりと言う。

「たまにはいいじゃん。どうせあと少しで見られなくなる風景だし」

03号とこうして普通に街中を歩くことはほとんどない。
彼の体質的なその格好を理由に、季節外れの時は拒まれるから。

私は別にいいんだけどな。
私たちだけが異質。
それが嬉しいと思えるから。



「にしても寒いなぁ……なんか温かい飲み物…自販機ないかなー……ってちょ、03号!」

03号は立ち止まることなくすたすたと行ってしまう。

人込みに紛れそうになる後ろ姿に、何故だか少し不安になった。進めばそこにいる距離なのに。

私はすぐに追いつくと、捕獲するように彼の腕にしがみついた。
彼は鬱陶しそうに「何だ?」とこちらを向いた。離れたことに気づいてないし。

「お、置いてかないでよ、この季節だとあんただってこん中に溶け込んじゃうんだから」

「お前が遅いだけだろう」

「もうちょいゆっくり歩いて」

街はクリスマスの飾りで賑やかな雰囲気に包まれている。

「…ずっと冬だったらいいのにね」

「そうか?」

「え、03号がそう思ってると思ったのに、違うの?」

「…俺は別にどうだっていい」

「ふぅん…」

「……暖かいな。」

「え?…ああ、手袋ね」

03号は手袋をしていなかった。
私が自然と繋いでいた指先を放さないでいてくれたことにめずらしいと感じながら、顔に出そうな嬉しさをむっと抑え、その手を包み込むように握る。

この瞬間、僅かなだけでも、君の心の落ち着ける場所でありたいと

ひ弱な私ができるほんの少しの気持ち。


「……今、すごく一般人な気分」

「それがどうした」

「……どうもしないけど。それより自販機探して」



今なら私達
恋人同士に見えるかな?




end.



10.12.23


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