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「日吉は誰か好きな人はおらんの?」
ザワリと空気が揺れる。
何故、俺はこの人からこんな質問を受けなければならないのだろう。
否、それよりも何故俺は今この人と二人で放課後の教室などにいるのだろう。
時を遡れば30分ほど前、部長に芥川さんを探してこいと言われたのがキッカケに違いない。
正直嫌だった。
貴重な時間をそんな事に費やすのが勿体無いという気持ちもあったが、それ以上にコートに姿の見えない忍足さんが一緒に居るのではと思うと憂鬱だったのだ。
しかしそれは杞憂に終わった。
けれどそれ以上の憂鬱にぶつかる事となったのは一体どんな神の悪戯か。
目の前にいるなかなか本性を掴ませないクセのある先輩は、楽しそうにレンズの奥で目を細め俺が答えるのを待っている。
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