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よみもの~中等部編
9 ~kaoru

ホームルームが終わって、かのんは無言で帰り支度をはじめる
いつもなら、西森と目で合図を送りあったり、周りのクラスメートと会話を交わすのに
始終俯いて

「オイ...ちょっといいか?」
「ごめん...私、今日はレッスンないから、はやく家に帰って練習したいの...」
そう、少しだけ笑って何でもないフリをしながら、俺の横をすり抜ける
西森にも、笑って。。。表情だけ作って、またね、と手を振り教室を出た

俺は自分の荷物をバッグに放り込み、かのんを追った
それでも、かのんに追いついたのは校門を抜けてからだった
「待てよ...お前」
「だって、私じゃみんなが納得しないもの!」
かのんは振り向き様にそう叫んだ
ギリギリの所まできているのかもしれない
いや、そうだろう、もう人目を気にする余裕すらないんだ。。。
「一番納得してないのは、お前だろうが!?」
 それに、俺が納得してりゃいいことだろ?
 なんでそんなに他人の事を気にするんだよ」
まただ。。。
俺はわかっていながら、こういう言い方しかできない
それがどれだけかのんにとって辛い事かを知りながら、他人の目を気にするなと言う
先輩達を責めることなんてできない、俺も。。。同じじゃないか。。。
「...だって...それじゃ、海堂君...迷惑する
 由香ちゃんだって、今日の事で何言われるかわからないじゃない...
 全部...私が悪い...から...」
そう言うと俯いて、また歩き出すかのん
ぽた。。。と、涙が落ちる
いくつも、ぽた、ぽた、ぽた。。。と

お前は悪く無い。。。
悪いのは俺なのに、なんで泣くんだよ?
なんで、お前はいつも自分を責めるんだよ?

そうする間にも、下校途中の生徒達の注目をあびる
俺ですら、そのまとわりつく視線が煩わしいと感じるんだ
かのんが、どれだけ辛いか想像すらできねぇ。。。
だから。。。一刻も早く、この場から逃げたかった
かのんの手をとって、一緒に逃げたかった
逃げて、少しでもかのんを他人の目から避けてやりたかった
それなのに、俺は何もできない
指先にさえ、触れる事ができない
逃げるったって。。。どこに行けばいい?
それすらも思い浮かばない
ただ俺は。。。俺達は、俯いて駅への道を足早に歩く事しかできない

情けない。。。

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あきゅろす。
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