[携帯モード] [URL送信]

よみもの~中等部編
5 ~kaoru

昼休みが始まってすぐだった

俺はかのんを連れて、教室から逃げ出すつもりだった

かのんの気持ちはわかる
いくら不二先輩の事が好きだとはいえ、おおっぴらにかまわれるのがイヤなんだ。。。
俺の時ですら、嫌がらせを受けた
それなのに、先輩達が揃って、かのんをかわいがっていると周囲に知られたら?
そんなことは考えたくも無かった
もう、かのんが傷ついて泣く顔なんて見たくない

だから、逃げたかった
俺はかのんを守ってやる事ができない。。。だからせめて、逃げたかった


「やあ」
不二先輩達は、遠慮もなしに教室へ入って来る
それだけで注目を浴びる
そして、かのんはびくっと身体をこわばらせる
あからさまに、顔をそらす事もできない
そんな事をすれば、たちまち、かのんの意思とは別の意味にとられるから
だから、すぅっと、静かに俯く事しかできない
一緒にいる西森も、かのんの事をよくわかっている
だから何も言わず、かのんの手を握るしかない

「カノンちゃん、誰と行くか決めてくれた?
 あ、薫ちゃんは証人だからね、ここにいてよねっ」
「うん...やっぱり本人の意思を尊重しないとね?」

「あのっ!」

「ん?海堂、何?」

「俺は認めねぇっ!!!」
口調がキツくなった
「どう言う事かな?」
ダメだ...冷静になれよ、俺
「コイツを貸すとか借りるとか、そういうのは認めねぇ...っス...あの...
 コイツはモノじゃねぇ...だから...」
そうだ、かのんは誰のものでもない
ましてや...俺のものだとも思ってねぇ
かのんはかのん、だ
「...そりゃ、コイツが先輩と一緒に行きたいなら
 俺の許可とか、そういうのはいらねぇっスよ...」
本当は行って欲しくない
行くな、と言いたいのに。。。強く言う事ができない。。。

「ねえ、奏音ちゃん?」
かのんは不二先輩の優しい呼びかけにも、ビクビクと怯えて、ますます身を固くする
「もしかして、僕達のコト、迷惑なのかな?」
小さな声で、いいえ、と言うが、かのんは、もう泣き出す寸前だろう
「あのさ、もしかして...」
「不二先輩...やめてください」
西森が不二先輩の言葉を遮った
「もう、いいでしょう?
 先輩達、自分でもわかってるでしょう?どれだけ女の子に人気があるか
 それこそ、先輩と一緒にいたいってっコは、たくさんいるんです
 それなのに、ファンのコ達に見向きもせずに、
 こうやって先輩達がカノンばっかりをかまうから、ヘンな嫉妬を買うんですよっ!
 カノンはいっつも周りの目に怯えてるんです
 知ってるんでしょ!去年の事!!
 どんだけカノンが辛かったのか、わかってるのっ!?」

西森の声が教室中に響いた
まわりで俺達の様子を伺っていたクラスメート達も
廊下から覗いていた他のクラスの生徒も、その言葉に息をのんだようだった
みんな、知っているんだ。。。
去年の事がどれだけ、生徒の間で有名だったか、という事が、今更ながらにわかる

本当にかのんの事を気に入ってるのはわかる
それなのに、なぜ、この先輩達は、あえて挑発し、うわさを煽るような事をする?
それがどれだけかのんを追い込む事になるかなんて、わかりきってるはずだ
わかってて。。。わかってて、ここまでするなんて
「...あの...」
声がかすれている
こんなかのんを目の前にして、俺は何をしてるんだ。。。
「うん、誰と行くか決めてくれた?」
「やはり、先着順、ということで、俺でいいかな?」
いたたまれない
「あの...」
かのんはこんなに困ってるのに
「乾っ、ちょっと待って!
 俺だって、カノンちゃん連れて行きたいもんねっ!!
 勝手に決めないでくれるぅ?」
それを承知で、まだこんなくだらない事で揉めている先輩達
「いや、英二...悪いが、俺の方が先に申し込んだんだ
 だから、俺が」
なんで。。。なんで放っておいてやらないんだよ
「待ってください、俺は、嫌っスよ」
「いやいや、海堂、別にとって食おうとか、何かしようというわけじゃないし」
「何かされてたまるかっ!!」
お前らにも、そして、他のヤツらにも
かのんを傷つける事は絶対許さねぇ
「だから、それはないってば...海堂、落ち着け」
「そーだよ、薫ちゃん落ち着いて〜〜〜っ」
落ち着けだと!?
「アンタら、コイツをなんだと思ってんだよっ!
 自分らがよけりゃ、コイツの気持ちはどうでもいいってのか!!!!!」
落ち着いていられるお前らの方がおかしいだろ!!!
「だから、落ち着けって...」
「うるせぇっ!!
 かのん、来い!コイツらにつきあってやるこたぁねぇっ!!!」

[*前へ][次へ#]

6/91ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!