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よみもの~中等部編
男女の間には友情は成り立たないらしい

なんか自分ばっかり心の中を晒してるようで恨めしく思ってしまった。。。
だから、続く言葉が棘をふくむ

「ね、ちょっとハナシしようか?そこ、座らない?」

もう辺りも薄暗くなってきていて、その上、このクッソ寒いのに、
河川敷の土手に座ってる私達
そりゃあ、ひとによっては『おわっ!青春してるね〜』ってカンジなんだろうけど、
生憎と、今の私は、そんな気分じゃない
どっちかっていうと、バカか、アホか、ってカンジ

「さっき桃城君言ったよね、私に尽くしてるって
 でも、私はそんなの要らない
 なんかしてくれるとか、してくれた、とか
 だからこうしてくれ、こうしてほしいって、交換条件みたいに言うんなら、もういいよ
 そういうのが受け入れられるコ、みつけなよ?」
「なんだよ、それ」
戸惑う桃城君の表情も、私には受け入れることができない
「そういうのってね、押しつけっていうの」
「好きなヤツに喜んでもらおうって一生懸命になるのが押しつけだって言うのかよ?」
桃城君の言う事はもっともだ、と思う、けど、私には重いだけ
「そういう風に考える事自体、相手に感情を押し付けてるって思わない?」
「じゃあ、どうしろってんだよ」
「お互いに依存し合うような関係の友達ならいらない
 支え合うのと依存するのは違う、と思う
 だって、それじゃ疲れるばっかりじゃん」

。。。カノンと海堂君の間にはそういう馴れ合いの生暖い空気がない
それぞれが自分の足で立ってる
そして、お互いを認め合うことで、お互いを想い合える。。。

「俺はアイツみたいに割り切る事なんかできねェんだよっ
 自分の好きなヤツが、他の男の事を考えるのなんて耐えられねぇっ」
「そう?
 でも、キミのことが好きな子には耐えろって事でしょ?
 桃城君がファンの子達にちやほやされるのはいいの?」
ちやほやされて喜ぶような桃城君じゃないのはわかってる
だけどね。。。
相手はどう受け取るかなんて、これっぽっちも考えてないでしょう?
そういうの、身勝手って言うのよ
自分が考えてる事は、相手も理解してくれてる、なんて思い込む事も。。。ね

「ちがうっ!」
どんどんアツくなる桃城君とは反対に、私はどんどん冷めていく
「ちがわないよ...
 カノンはね、いっつも惨めな気持ちになってるの...知らないでしょ?
 海堂君だってカノンが好きで、カノンもあんなに海堂君が好きで、
 同じ気持ちを共有してるのに...それなのに、カノンはいつも怯えてるのよ」
なにかいいたそうに桃城君は口をひらくけど、彼の言葉を聞きたくなかった
だから、無視してコトバを続けた
「海堂君はね、桃城君みたいにファンのコと仲良くしたり、
 不二先輩や菊丸先輩達みたいなファンサービスはしない
 もちろん...邪険にもしないけど、淡々と接してる
 それでも、カノンは不安でしょうがないの」

 『海堂君が、他の人を好きになるんなら...しょうがないよ』
そう言ったカノンの寂しそうな顔と諦めを含んだ声が、頭に浮かぶ

「そうやって怯えながら一緒にいるって、どうなんだろうね?」

それでも。。。
カノンは海堂君が好きなんだよね?
海堂君を、好きで居続けたいんだよね?
だから、一緒にいる為に。。。

「だからカノンはね、海堂君に依存しなくてすむように、
 支えがなくなる日が来ても自分の足で立っていられるようにって、一人で頑張ってる」

だって。。。

人を好きになる事は、楽しい事ばかりじゃない
『好きなだけじゃダメ』なんじゃない
だってそれは。。。

「前に言ってた
 海堂君は特別なんだ、って
 愛してるとか、恋してるとかじゃない
 ただ、いっぱい勇気をもらえる、頑張る力をもらえるって」

だから『好きなだけ』でいいんでしょう?
好きだから。。。がんばる
一緒にいたいから。。。がんばる

でも、それって、辛いね?厳しいね?

本当は一緒にいてよ、私の事だけ考えてよ、って言いたいんでしょう?
甘えたいんでしょう?
海堂君にすがっていたいんでしょう?

でも、カノンにはそれができない
だって
『好きじゃなくなる』その日が来るのが怖いから。。。
支えてもらえるものが無くなるのが。。。
立っていられなくなるのが。。。怖いからなんでしょう?

「私...そんなカノンをずっと見てきた
 ずっと...ずっと...いいな、って思ってた
 自分にもそんな人ができたらいいな、って」

でも、私はカノンのマネはできない
そんなふうに人を好きになる事ができる程、私は強くない

桃城君はやさしい
海堂君とは違う
わかってる
桃城君の言う事も、もっともだって
桃城君にも、言い分があるって

でもね、わたしにだって言い分があるのよ

「私こそ、自分の理想を押し付ける所だったね
 私、一人で帰るから...桃城君の家、反対方向でしょ?
 送ってくれてありがとう
 あ...と、缶ココアもありがとうね、ごちそうさま」
立ち上がろうとして、重心を足に移した所で腕を捕まれた

「俺、俺はアイツ...海堂のような愛し方はできねぇし、そんなのわかんねぇ
 でも、俺だってユカちゃんを好きな気持ちはウソじゃねえ」

愛?なにそれ...

「桃城君、愛し方なんてよくもまぁ、こっ恥ずかしいコト言えるね?」
「ふざけんなよっ!」
怒鳴んなくたって聞こえるわよ
「ふざけてないよ
 私ね、口に出して言う『愛してる』なんてコトバ、信じない
 信じられるのはいつも一人、自分だけよ
 カノン達をみてると、つくづく思う」

だって、カノンは
カノンは海堂君にとっても、自分が特別でいたいから、海堂君に甘えられない
海堂君と同じ目線でいられるように
一緒にいる事で、引け目を感じなくてすむように
アンタは歯を食いしばって、一生懸命
カノン、アンタいっつもこんな辛い思いしてるの?
こんなに辛いのに
それでも、海堂君の事、好きでいられるの?

アンタ達、厳しすぎるよ

「桃城君は『桃城君の愛し方』に応えてくれる人をさがせばいいよ」
自分で言って、笑い出しそうになる
私ってバカだ
そんな理想論なんか放っておいて
好きだの愛してるだのって、口々に唱えて
お気軽な恋愛を楽しめばいい
人気者のカレシなんて、最高じゃない

「なんで、わかってくれないんだよ」
わかってる、わかってても妥協できないのよ
「桃城君だって、私の事、わかってくれないでしょ?お互いサマ」
「そんな言い方すんなっ」
「ごめんね、こんな言い方しかできなくて」
「違うだろっ」
「違わないよ
 友達でいようね、とか、そんな事は言わない
 特別な友達っていうのも、桃城君次第だよ
 私、桃城君の事、嫌いじゃないよ?っていうか、好きだから」
無理に笑いを作ってみせる。。。けど、なんだか惨め


「じゃあね」


どうしてだよ?

そう、聞こえた
でも、振り向く気にもなれなかった

もうこんな会話、ウンザリ。。。
最低最悪のバレンタインの幕引き

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あきゅろす。
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