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よみもの~中等部編
10 ~side kaoru

「こんなに長い時間、海堂君と一緒にいたのってはじめてだねぇ...」

画面を観てるだけで、映画の内容なんてこれっぽっちもあたまにはいってこない
それに、正面を向いていても、コイツが俺の事を。。。
ちらちらとこっちを見てるのを感じる

ずっと考えてた
あの日の音楽室の事
あの時、俺なんであんなことしちまったんだろう
思いつき?
確かに思いつきだった
でも、離れたく無いって
一緒にいて欲しいって思ったら
どうしても。。。
本当にどうしようもない程
お前に触れたくなったんだ

。。。どうしよう、俺。。。
今すごくお前の事意識してしまってる

「なぁ...」
どうしよう。。。
「えっ?」
驚いた顔
「俺...」
どうしよう。。。もう。。。
そう思ったときには、俺は、アイツの身体を抱き寄せていた
「ごめん」
ぎゅっと抱きしめると。。。嫌がってるのがわかった
俺は急激に沸き上がった欲求を、コントロールできなかった自分が恥ずかしくなって、
もう一度だけ、ぎゅうっと抱きしめ、腕の力を緩めた
「ごめん」
なんてコトしちまったんだよ、俺。。。
さっき。。。どうこうしようと思ってない、なんて言ったクセに
舌の根も乾かないうちに。。。

気まずい雰囲気が続くかと思った
。。。けど、アイツは、いつもの声で、海堂君、と、俺を呼ぶ
ふにゃっと笑う顔、ちょっとだけ首を傾げる仕草
全てが、俺を優しい気持ちにさせる
俺の手にアイツの手が重ねられ、
まっすぐ俺の事をみているのが、とても不思議な感じがした
少しでも長く、ここにとどまっていて欲しい、とどめていたいと。。。
ああ、そうか、この気持ちが、愛おしい。。。
という感情なのかもしれない

触れていない反対の手で、アイツの頬をそっとなでると
くすぐったそうに、首をすくめる
その仕草がとてもかわいらしく感じて、もっとみてみたい
もう一度なでてみると、くすくすっと笑って、俺の手をつかまえる
額に唇を落とし一旦アイツから離れた
そうしないと、顔が見えないから
首を傾げると、アイツの髪が、さらり、と流れた
初めて会った日は、短かったのに
今はもう肩よりもずっと長くなって、さらさらと揺れる
髪をするっと、指で梳くと、またくすぐったそうに笑う
そして、その笑う唇に、そっと触れてみる
アイツは抵抗もしなければ、何も言わない
もう一度。。。でも、さっきよりも少しだけ長く触れ合わせた
少しだけ身を引き、様子を伺う
アイツは少しだけ俺の方に身体ごと向き直る
アイツから触れてくる
離れる間際に、くすりと笑ったのがわかった

もっと触れてもいいのかな
もっと。。。触れてみたい
額、頬。。。
そして髪をすくいあげ、そのまま抱き寄せる
さっきよりも少しだけ、深く。。。
「ん...」
鼻にかかった息が漏れる音に驚いて、あわてて離れる
「海堂君...」
上目遣いでいつものふにゃっとした顔
「好きだ」
そう告げて、またさっきよりも深いキスを落とした
身体を引き寄せると、
アイツの手が、ふわ、と、俺の肩にかかった
唇を吸うと、その手にきゅっと力が入る
一瞬だけ離れる隙に、好きだ、と、何度も繰り返す
いろんな想いが頭に浮かんでくるのに、
今はその言葉しか口から出てこないんだよ、ヘンだろ?
好きだ、かのん。。。すきだ。。。
もう何度目かわからないキスを交わしたところで、
アイツ。。。かのんが俺の胸を押した
どうして?俺は急に不安になる
でも
かのんは、ふわぁ〜と、間抜けな声を出して、腰や肩、首をひねる
二人とも不自然な体勢でいたため、いい加減、身体のあっちこっちががだるくなってる
そういや、俺も、脇がツリそうだ
何だよ、ムードもクソもねぇな
俺はおかしくなって、声を出して笑った
何で笑うの?と、拗ねた顔を向けるが、すぐに一緒になって笑う

ひとしきり二人で笑った後、またふにゃっとした顔になる
「海堂君」
「うん?」
「はじめて名前...よんでくれた、ね?」
「え...」
「ね?」
「...あぁ...さっき」
「さっき?」
「さっき、だけ」
「だけ?」
「たまに」
「たまに?」
おうむ返しで俺を追いつめる
「恥ずかしいんだよ、バカ」
「バカ?」
短いほぼ単語だけのラリー
これだけで、楽しいと思ってしまう
ぎゅっと抱き寄せ、耳元でささやいてみる
「すきだ...かのん」
こてん、と、頭を俺の肩に預けて、うん、と言う
「...かおるクン...」
ぶはっ!と、吹き出し、笑いが止まらない様子
「ダメ、やっぱ慣れない、ムリっ」
また大笑い
そんなかのんに呆れる俺
やっぱりコイツはこんなヤツだった
それでも、俺はお前のそういう所も好きで好きで、たまらないんだよ

抱きしめたまま、俺も笑い出してしまった
もうこうなったら、二人して笑いが止まらなくて、
結局、向き合い、ひとしきり笑い合った
もうさっきの事が、ウソの様だ
本当に、俺。。。俺達あんな事してたんだろうか?
それくらい、現実味のない時間
でも、俺達の間で何かが変わった瞬間だと思って、いいよな?

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あきゅろす。
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