魔法少女リリカルなのはStrikerS ―次元騎士―
ユーリ「過去は過去。今見据えるべきは未来だ」セイバー「その通りですユーリ!」はやて「セイバー急に元気になったなぁ」
夜、ユーリの部屋では、椅子に座って紅茶を飲むユーリと、気まずい表情を浮かべてユーリへ背を向けながらベッドに腰掛けるはやて、セイバーの姿があった。ユーリは紅茶を飲み終わるとテーブルにカップを置き、ベッドへと入る。はやてとセイバーはちらっとユーリを見ると、ユーリの隣にはやて、その隣にセイバーという形でベッドへ潜る。
「……兄ちゃん」
「ん?どうした急に……」
はやてはベッドに潜ったままユーリの背中へと抱きつく。弱々しいその声に、ユーリははやてがセイバーから聞いた話を引きずっているんだと気づく。背中が妙に冷たく感じ、耳を澄ませるとはやてのすすり泣く声が聞こえてきた。
「ひぐっ、ぐすっ……兄ちゃんは、うちをおいて消えたりせぇへんよね?」
「当たり前だ。大事な妹達を残して消える馬鹿がどこにいる」
「うん……スー、スー……」
はやての声からは少しだけ疑いの感情が読み取れたが、ユーリの言葉を聞いてひとまず良しとしたのだろう。今は寝息を立てて眠り始める。ユーリははやてが寝たのを確認すると、背を向けながらセイバーへ話し出した。
「今日は、すまなかったな」
「えっ?」
突然ユーリから来た謝罪に、セイバーは少し驚くと共に起き上がる。その時にはやてが起きそうになるが、セイバーは自身の口をふさぎ、はやてが寝ているのを確認すると改めて問いかける。
「急にどうしたんですか?」
「オレもな、自分の存在を消すのが最善の方法じゃないって事は分かってるつもりだ。オレがいなくなったところで、イリヤが聖杯戦争に巻き込まれず、家族と幸せになる確証はない」
「ユーリ……」
「だが他に方法が見つからないんだ。はやて達も、これから先、聖杯戦争に巻き込まれる可能性が高い。オレは、はやて達を綺礼相手に守り抜く自信がない、恥ずかしい話だがな……」
ユーリにしては珍しく弱気だった。綺礼がそれだけ危険な人物だという事なのだろうが、それプラス今は機動六課としてレリック事件を追っている最中だ。今この瞬間を綺礼に突かれては、危ういのは目に見えている。
「だから、イリヤや璃正を救える可能性もあって、はやてが聖杯戦争に関わらないで済む可能性が一番高いこの方法を選んだ」
「そうだったんですか……私はあなたがイリヤの事を引きずっているからだとばかり……」
「それもある。イリヤの死を完全に受け入れた訳じゃない。でもな、元より失ったものは帰ってこないんだ。今のオレは、はやて達を幸せにすることを最優先に考えている。今日のはやて達の落ち込みようを見たら、尚更な……」
セイバーはユーリの本心を聞いて安堵の表情を浮かべる。ユーリはみんなの幸せをしっかり考え、その上で今の答えがあることが分かったから。過去を引きずっている訳ではなく、はやて達の事を考えている事が分かったから。
「少しだけ安心しました。たとえロストロギアを見つけても、急にはやて達の前から姿を消すわけではないのですね」
「勿論だ。他に良い方法がないかは考える。探していく内に、はやて達に何もなければそのままで良いとオレは思ってるよ」
「……良かった。ユーリはやはり、私の大好きなユーリでした」
嬉しそうな表情を浮かべたセイバーは、ベッドから出ると反対側からベッドに潜り込み、ユーリの前へと入ってくる。その時はやてが寝返りを打ったため、ユーリははやての方へ距離を詰め、セイバーはそのままユーリの胸へ顔を埋めた。
「わざわざ狭い所へ移らなくてもな……」
「はぁ、鈍感は相変わらずですね。でも今日は許します……お休みなさい」
「お休み」
暫くすると、セイバーは寝息を立て始める。ユーリは眠り始めたセイバーの頭を優しくなでると、自身も眠りにつくのだった。
後書き
いてミ「〆さん、コメントありがとうございます!嬉しいお言葉を……ユーリの過去編はこれで一旦終わり、次回から本編へ戻ります。管理局の白い悪魔が……(ブルブル)次回をお楽しみにっ!」
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