魔法少女リリカルなのはStrikerS ―次元騎士―
ユーリ「アーサー王って男じゃないのか!?」セイバー「はい、女です」イリヤ「セイバー、お兄ちゃんに色目使ったら……その胸じゃ心配ないね」
隊舎のロビー、そこへ設置されたソファーにはやては座っていた。目に浮かんだ涙を拭いながら、誰かがこちらに走ってくる足音が聞こえて顔を上げる。見えたのは、必死に駆け寄ってくるフェイト、なのは、そして……
「二人共、取り敢えず状況を……」
二人に手を引かれながら困った表情を浮かべているセイバーだった。はやてはフェイトとなのはの考えがすぐに分かった。そうだ、兄に聞き辛いならセイバーに聞けばいい。あの時のセイバーもユーリの考えを否定していた。だったら話してくれるはず……はやては三人をソファーに座らせると、隣に座ったセイバーへ問いかける。
「なぁ、セイバー」
「はい?」
「兄ちゃんは、うちらに話せへん辛いことでもあるんかな?」
少し涙目のはやてからきた問いに、セイバーは一発で理解した。どうしてこんな事を聞いてくるのか、何故訓練場で三人共元気がなかったのか。セイバーは一度驚いた顔になるがすぐに穏やかな表情へと変わり、静かにその口を開く。
「聞いていたんですね、私とユーリの会話を」
「ごめんね、セイバー。ユーリが何をするのか気になって……」
「モニターで見ていたんです。でも、まさかあんな……」
「あなた方が謝ることはありません。悪いのは、馬鹿な考えを改めないユーリなんですから……」
セイバーは膝の上で両手を握り締め、その顔は怒りの表情を浮かべていた。ユーリがいなくなれば、こんなにも悲しむ人達がいる。それを実感したセイバーは、この場にいないユーリに激しく怒っていた。はやてはそんなセイバーを見て、再度問いかける。
「セイバー教えて。兄ちゃんは何を抱え込んで、どうしてあんな事を考えとるんか……」
「……三人になら話しても問題ないでしょう。ユーリが何故、あのような考えに至ったのかを……」
―――――――――――
聖杯戦争―――それがそもそもの始まりだった。十二年前、火災事故によって両親を亡くしたユーリとイリヤは、当時地元の教会に勤めていた言峰綺礼に引き取られ、教会の一室で何不自由ない暮らしを提供される。イリヤは失った両親を思い出して毎晩部屋で泣きじゃくっていたが、ユーリが慰めることで何とか両親の死を受け入れ、兄妹二人で強く生きていく事を決めた。だが、ある日二人は知ってしまう。聖杯の存在を……
「お兄ちゃん。聖杯なら、パパとママも……」
「そうだな。幸い魔術ならオレも使える。イリヤも適性があるから、聖杯戦争にかけてみるのはありだ」
教会の物置部屋では、薄暗い部屋の内部をロウソクで照らすイリヤのそばで、チョークを使って床に召喚陣を描くユーリの姿があった。そして召喚陣を描き終わると、ユーリはあるサーヴァントを喚び出すために一本の剣を投影する。
「投影〈トレース〉開始〈オン〉」
そして彼の右手に現れたのは、ロウソクに負けないくらいこの部屋の中を明るく染める黄金の剣。この国に伝わる伝説の人物が、王の選定の際に引き抜いたとされる物。
「勝利すべき黄金の剣。通称『カリバーン』これなら聖杯戦争でも戦える。彼なら、オレ達に力を貸してくれる」
「じゃあ、召喚の儀式は私がやるね」
ユーリが召喚陣の中央にカリバーンを突き刺すと、イリヤはロウソクをユーリへ渡し、召喚陣の前に立つ。そしてユーリが見守る中、イリヤによる詠唱が始まった。
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
召喚陣は淡い光を発し、部屋の中は風が吹き始めた。ユーリは髪をたなびかせながら、その様子を険しい表情で見守っている。イリヤは急に吹いた風に少し目を細めるが、そばで見守ってくれているユーリを見て笑顔を浮かべ、再度詠唱を続ける。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ……天秤の守り手よ!」
イリヤの詠唱が終わると、カリバーンは光の粒子となって消える。すると風が強くなり、召喚陣は眩い光を発し始めた。その眩しさにイリヤとユーリは目を瞑るが、数秒程で風と光は止み、目を開いた二人の前には……
「サーヴァントセイバー、召喚に応じ参上した―――問おう、あなたが私のマスターか?」
「「……誰?」」
青を基調とした騎士服を纏う、女性の姿だった。
―――――――――――
「ユーリさんの出身世界も地球だったんだ……」
「兄ちゃんの故郷ってイギリスやったんや……(グレアム叔父さんも確かイギリスやったような……)」
「ユーリとイリヤは、アーサー王は男だと思っていたようで、あの時はとても驚いていました」
なのはとはやてはセイバーの話を聞いて不思議そうな表情を浮かべていたが、フェイトは一人何かに気付いたのか、驚いた表情を浮かべながらセイバーへ向かって話し始める。
「えっと、もしかしてセイバーって……」
「はい。私の真名は、アルトリア ペンドラゴン……地球では、アーサー王として伝承に伝わる人物です」
「「「…………ええぇぇぇぇ!?」」」
六課のロビーに、三人の声が響き渡る瞬間だった…………因みに、セイバーはこの後胸が小さくなっていることに気付いてかなり落ち込んだとか。
後書き
いてミ「どうも、ティアナのイベントとユーリの過去イベントが重なってしまって頭の中がごちゃごちゃになっているいてミです。取り敢えず……セイバーの召喚するタイミングミスったあぁぁぁぁ!……次回をお楽しみに……(泣)」
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