出陣、南中 (娘)
背後に気配を感じ振り返るとそこには見知った人物と生物がいた。
『三成様、只今戻りました。』
「千枝か」
自分の名を呼んだ者の名を呼ぶとそれは膝をつく。
『張コウ殿に動きがありません。敵は真っ直ぐ本陣を目指しており、このままだと本陣が落ちるのも時間の問題かと…』
「ご苦労だったな」
「ふ、あいつも誇り高き魏の将であったか…」
「…笑い事ではないだろう」
『…………』
「無言で睨むな。まったく…いつもの馬鹿はどこに行ったのだ」
仕事の時、たまに人がかわったのではないかと言うほど千枝は態度が変わる。曹丕は慣れていないため、少し困惑しているらしい。
反乱軍を鎮めるために南中までやってきたのだが、ここで味方の張コウが攻撃を止めた。
それを千枝に探らせたのだが、動く気配がないらしい。
「千枝、もうかまわん。その堅苦しいのを止めろ」
『はい』
「…………。」
『何ですか曹丕様。その怪しいものを見る目は』
「…何でもない」
「おれ!?」
何でもないと言いつついつも千枝の頭の上にいる三吉をわしづかむ。
『行ってらっしゃーい』
千枝はというと誘拐される自分の相棒に手を振っている。
「てめぇ、助けろよ!ど阿呆ぉおお」
叫ぶ三吉に背を向け、俺と一緒にいる千枝の父親である吉継のもとにかけてくる。
『父様ー』
「我が娘よー」
千枝が踏み込み吉継に向かって飛び、それを受け止めるように吉継が両手を広げる。
「阿呆か…」
俺が呟くと同時に千枝が吉継に飛びついた。反動で二人でグルグルと回っている。
「今日は転ばなかったか」
『はい!転びませんでした』
「それは良かったのぅ」
この親子の会話はよく分からない。
そんな二人を見ていると、三吉を鷲掴んだまま曹丕がこちらに向かって歩いてきた。
「おい、そこの馬鹿三人組」
「『およ?』」
「な!?」
父様が私を誉めてくれているときに、三吉を鷲掴みしたまま曹丕様がやってきて父様、私、三成様を馬鹿三人組とまとめて呼んだ。
「なんだその呼び方は!?あっちはともかく俺は馬鹿ではない。ひとまとめにするな!」
三成様はそこまで怒るかってくらい怒っております。
「そう怒るな。私はこれより張コウを説得しに行く。三成、お前もついてこい」
「わかった。しかしこいつとだけは同類にしないでくれ」
『そんなに嫌がらないで下さいよ!』
扇で私を指す。そこまで嫌がられるとさすがの私もへこみます。
「ふふふ…ほほほほ」
私の真横では父様が大爆笑してます。
『痛いっ』
「見捨てやがってこのくそ餓鬼ぃいい」
そして曹丕様に解放された三吉が頭の上から嘴でつつかれる。
『よくもやったなこの毛玉!』
「うるせー、ちーび!餓鬼、ちんちくりん」
私達の口げんかには誰も見向きもせず、三成様も曹丕様も馬にのる。
これからは生きるか死ぬかの世界。けんかなんてしてられない。
「行くぞ」
曹丕様が進軍を開始し、私も三成様について待機していた砦をでた。
三成様と父様を守るのが私が戦う理由。
三成様と父様を襲う兵を切り捨てながら目的地である張コウ殿がいる砦に向かう。
『…!』
何かがこちらへ向かう音がする。
「これ以上は行かせないよ!」
飛んできたものを鞭で撃ち落とす。
「千枝!」
『私は大丈夫です。三成様はそのまま、お進み下さい』
「しかし!」
「行くぞ、三成」
父様が三成様を促した。
「……必ず追いつけ!」
そういい残すと三成様は進軍を続けた。
「あんた邪魔するんじゃないよ!」
『それは無理なお話です。この先には我が主がいらっしゃいますから…お通しできません』
先ほど撃ち落としたものを持ち上げた女の人に私も武器を構えた。
「行くよ!」
『行きます!』
露出の多いお姉さんとの戦いの始まりです。
祝融の喋り方がわからないであります。←
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