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馬鹿みたい


『…しつこいぞ、生徒会長』

「アーン?言っただろう俺様の女にすると、な」

ぱちんっ

「「「「「きゃあああああ」」」」」

『ああ、うるさいぞ』

あれからというもの毎日毎日、生徒会長が私の教室にくるようになった。

毎朝、私の席は生徒会長目当ての女子が集まって近づけない。

全く困ったものだ。


『私は毎日毎日忙しいんだ。諦めてくれ』

「諦めねえ」

『しつこい男は嫌われるぞ』

「アーン?気にしねえよ」

「いや、気にしろよ」

「ちっ、また来やがったな宍戸」

それからあの日から毎日生徒会長を引き取りに来てくれる長髪の先輩がいる。

『あ、いつもすまない』

「いいや、こっちこそ毎回うちの部長がすまねえな」

「じゃあ、また放課後な」

『来なくて構わないぞ、ではな』

引きずるように長髪の先輩が生徒会長を連れて帰る。

引きずられながらも「またな、メス猫達!!」と失礼な言葉を撒き散らして去っていった。

「「「「きゃあああああ、跡部さまぁぁぁぁ!!」」」」


未だに分からない、クラスの女子達の萌えポイントとやらが。

「いやあ、最近このクラスは毎朝騒がしいなー。ほらー、席つけ」

生徒会長がいなくなってガランとした自分の席に座る。


「可哀想だなー、会長いないとボッチか」

『山田殺すぞ』

「いやーん!じゃあ出席とるぞー」

気持ち悪い声を出す葵を睨みながら机に突っ伏す。

まず、俺様の女にするとはなんなんだ。わからん。

「野宮さん」

『あ?』

1限目の終わったあと鳳がなんだか控えめに声をかけてきた。

「あの…野宮さんはテニス部のマネージャーの話どうするの?」

『どうするも何も、毎朝断ってるぞ』

「そっか。興味はないの?」

『興味と言われてもな、私は人を世話すると言うより世話される方だしな。それに恐らく迷惑をかけることになるから止めといた方がいい』

「迷惑って?」

『そんなこと、お前が気にすることじゃないぞ』

ごめんと謝る鳳に首を傾げる。

「しつこくいっちゃったかなって」

『いや、そう言う意味じゃなくてだな』

「そうよ、鳳くん。湊はむちゃくちゃ喜んでるわよ!」

『…?』

何処かから小夜の声がする、と思ったら真後ろに立っていた。

『うぉ!?何を言っとるんだお前は』

「あんまり人と話さないからわかりにくいだけで根っこではむっちゃくちゃフレンドリーに会話できてるよ!もう一息、ふぁーいとー」

「えっ、あ、うん」

『何を頑張るんだ、小夜いい加減にしろ』

「いいか、鳳。これが世間で言うツンデレだ。デレるまで攻め続けろ」

『いい加減にしろよ、山田』

「はは…」

葵と小夜が変なことを言うから鳳が困っているじゃないか。


『悪いな、鳳。コイツら馬鹿で』

「ひっどーい」

「マジひっどーい」

『うるさい』

「ううん、俺は楽しいから全然いいよ」

『そうか』

「…………あ」
「お?」
「あらま」


『なんだお前ら人をじっと見て』

「葵先生、見た?」

「ああ、見た見た」

『なんだよ』

人の顔を見てニヤニヤする葵と小夜が気持ち悪い。

『おい鳳。コイツら何ににやついてるのかわかる…』

鳳に何なのか聞こうとそちらをむくと言葉を失った。

『お前具合が悪いのか?』

「え!?いや、違うよ」

何故なら具合が悪いのかと思うくらい顔が真っ赤だったのだ。

それを見た葵と小夜はとうとうお腹を抱えて笑いだした。

「も、もうなんなんですか!!」

『…………』

顔は真っ赤なまま少し目に涙を溜めて怒る鳳。

…………。


またあの動悸がする。

そんなとき、休み時間の終わりを告げるチャイムがなる。

「…………」
『…………』

私と鳳の間には沈黙が流れ出した。


葵は授業へ、小夜は自分の席へと帰っていった。

私の心臓はまだドキドキとうるさい。しかも前葵の言ってた変なことを思い出して更にうるさくなる。

ああ、何だか



馬鹿みたいだ


(不覚にもかわいいと思ってしまった)
(不意に君の笑顔を見て動けなくなってしまった)
(はずかしい)
(もう消えて無くなりたいくらいにはずかしい)



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あきゅろす。
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