俺様宣言
「よぉ、野宮湊」
『お、生徒会長』
絡んできた不良共を蹴散らしてストレス発散してきた朝。
葵の説教を軽く聞き流してやっとたどり着いた教室の自分の席だが…。
「お、おはよう野宮さん」
『おう、はよ』
なんで私の席で紅茶を飲んでいるんだ。しかも普段は寄り付かないクラスの女子が私の席に群がってる。
人気者はすごいな。
『鳳、これはなんだ』
「それが…跡部さんが」
鳳に説明を求めたらパチンと誰かが指を鳴らす。
するとギャーギャーと騒がしかった周りの音がピタリと止んだ。
「いい子だ、雌猫達」
『雌猫って誰だ、失礼なやつだな』
生徒会長はふんっと威張った後私を見た。
「よくぞ聞いてくれたな湊」
『馴れ馴れしく呼ぶんじゃない』
「俺様が来たのは他でもない」
『無視か』
「お前をマネージャーに任命するためだ!!」
ずびしっと生徒会長は私を指差す。
『断る。そして人を指差すな』
「アーン？もういっぺん言って見ろ」
『断る』
「何故だ!?」
『嫌だから』
それだけ言うと鳳は口をぽかんとあけ、生徒会長はわなわなと震えだした。
『そろそろ授業が始まるぞ、教室に帰れ』
「こ、この俺様が直々に指名したのになびかんとは…お前」
『と言うより私の席から退いてくれよ生徒会長』
「ふん、気に入ったぜ!!」
『また無視かよ』
話を完全無視でギュッと私の手を握る。
「絶対にお前をマネージャーにしてやる」
『だから断るといっとるだろうっ』
バシッ
あまりにもしつこいのでつい殴ってしまった。ざわつく教室。
「野宮さん酷い！」
「跡部様をぶつなんて!?」
「サイテー」
「暴力女」
「ちょっと調子に乗りすぎなんじゃないの？」
『おぉぉぉぉ』
何よりすごかったのは生徒会長の周りを囲んでいたクラスの女子。
いつもは黙りを決めてるのに私が生徒会長を殴ったら正々堂々と文句を言ってきた。少し感動。
『つい、手が出てしまった。すまん』
「ついって何よ！」
「止めろ、てめえら!!」
申し訳なくなり謝ると逆に怒らせてしまった。
どうしたものかと考えていたら、さっき殴った生徒会長が頬を押さえながらパチンと指を鳴らす。
お前だったのか
「ふん、俺様を殴るとはいい度胸じゃねえの。ますます気に入った!!」
『いや、気に入らなくていいんだが』
「俺様は絶対にお前をマネージャーにする」
『だからならんて』
「そして、俺様の女にしてやる！」
『…………は』
そこまで言い終わると腰に手を添え、満足そうに高笑いをした。
周りでは割れんばかりの黄色い悲鳴。耳に穴が悪だろう。よくそんな高い声が出るものだ。
「だ、駄目です!!」
「アーン？」
「跡部さん、なに言ってるんですか!?」
「お前こそ何言ってやがる」
「とにかく駄目です！駄目ったら駄目!!」
「もう決めちまったんだよ、残念だったなー!!はーははははは、はーははははは！」
「駄目駄目駄目ですってば!!」
私は理解できないなか、鳳が必死に生徒会長に駄目だと言っている。
なんなんだ、コイツらは。
「跡部」
「アーン？」
「あ、宍戸さん…」
そんな訳のわからない二人のやりとりを止めたのは長髪の男子。
「そこまでにしろよ、二年の教室で何馬鹿やってやがる」
「なんでお前がここにいるんだよ、宍戸」
「知り合いに聞いたんだよ、ほら帰るぞ」
「チッ、仕方ねーな」
やっと私の席から退いた生徒会長は、ニヤリと笑いながら再び私を指差す。
「覚悟しろよ。俺様は狙った獲物は逃がさねえ」
『人を指差すなと何度言えば分かるんだ』
パチン
「俺様の美技に酔いな！」
「「「きゃあああああああああああああああ、跡部様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」」」
『なんで私がお前のビキニを眺めなければならんのだ。気持ち悪！』
「ビキニじゃねぇ!!美技だ！」
よくわからんが最後に顔を真っ赤にして教室から出ていった。
「すまねえな、迷惑かけて」
『いや、こちらこそありがたい。助かった』
長髪の男子は申し訳なさそうに笑って教室を出ていった。
「湊!!」
『小夜』
「大丈夫？変な人に絡まれてて心配したよ」
『いや、長髪の男子が生徒会長を連れていってくれたからな、大丈夫だ』
「よかった、役に立って！」
『ん？』
「なんでもなーい」
長髪の男子の話をしたら役に立ってよかったと言った。知り合いか何かなのだろうか。
「あ、葵せんせ来た！じゃまた後でねー」
聞こうかと思った時にはもう葵のやつが来ていて席に戻ってしまった。
『……………しかし、俺の女ってなんだ？』
よくわからない宣言をされてしまった。それに鳳も何か必死になっていたし。
なんなんだろうか。
俺様宣言
(跡部さんがライバルなんて…)
(マネージャーになんかなるか)
(絶対に俺様の女にするぞ)
(これでいいのだろうか)
、
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