辞書も時に役立たず
恋…とは一体なんなんだ。
辞書で調べてみた。
男女の間で、相手を好きになり、相手と一緒にいたいと思う強い気持ち。恋愛。
『……………』
相手を好きになる…恋愛。
あああああありえねえよ、なんで私が鳳みたいなお節介野郎に……
『そもそも好きになるってなんだよ』
相手に好意をよせる、心が強く引かれる
『…ぶっ』
わからない。好きってなんだ、恋…ってなんなんだ。
ていうか…
『なんであいつの言ってたことに反応してんだ馬鹿!!』
やめだやめだ、こんな分かりもしないことについて考えるなんて。
『テレビでも見るか…』
落ち着こうとテレビをつけた。画面に映るのは二人の男女。何だかわからんが頬を紅く染めて見つめ合っている。
『……………?』
「もう駄目よ、私達」
「何故だ、まだバレていないじゃないか」
「確かにまだバレてないわ。でもいつかバレる。これ以上貴方を好きになったら私、きっと離れられなくなる。それならいっそ、今終わりにするの…っ」
『…あ゛?』
「花子!!」
「太郎さんっ」
その瞬間、私はテレビをつけたことを激しく後悔するのだ。
その男女は口と口とを合体したのだ。
『ぎぃぃぃやあああああああああああああああ』
パリーーーーン
叫んだが先かリモコンを投げテレビ画面が割れるが先か。
気がつけば部屋のなかはガラスだらけだった。
私はというと、涙目でただ散らかった部屋を眺めへたり込んだ。
『恋なんて…してたまるか…!!』
あんな、あんな恥ずかしいことをしなくちゃならん恋なんて絶対にするもんか。
私は強く決意した。
次の日
「野宮さん、おはよう」
『……………!!』
「え?」
いつものように鳳に挨拶された。
私と顔を合わせると八の字眉になる。
理由は簡単私の顔が凄いことになっていたのだろう。
顔に力を入れておかないといろいろヤバイからな。
「ど、どうしたの?」
『……………なんでもない』
それだけ言って教室に向かう、と鳳が隣に並んで歩きだした。
「一緒に行こう」
『……か、勝手にしろ』
わからんが、なんだか心臓がバクバク言ってきた。
これはきっと何かの病気なのだ。
決して恋なんてものではない。
あの馬鹿の勘違いだ。
辞書も時に役立たず
(…顔も暑くなってきた)
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