なかよしこよし
●Diamond ling (はんなり)
ささやからながら
空から贈り物をするよ
気に入ってくれると
うれしいね
いつにも増してばかげた文が、竹中半兵衛から届いた。
贈り物をするというのに、文に添えられたものはない。
空から何かが降ってくるとでもいうのか。
実にくだらない。
何のつもりか知らないが、こちらとて、くだらない冗談に付き合っている暇など毛頭ない。
「捨て置け」
「はっ」
数日後。
いつもと変わらぬ朝を迎えた。けれど、変化は突然に訪れた。
「元就様っ!」
「なんだ、騒がしい…」
「そ、外がっ!!元就様っ!」
「?」
皆が慌てふためく中を外に出ると、昼前だというのに薄ら暗い。
「太陽が、欠けて…」
「おお…不吉な…」
「静まれ!かようなもの、ただの自然現象だ」
「…」
「じきに収まる。騒ぐな」
とはいうものの、これは初めてだ。
ただの自然現象ではあるだろうが、日輪がその姿を、光を奪われようとは、なんとも不吉なことではないか。忌々しい。
ゆっくりと姿を隠していく太陽はじきにすべてが黒く覆われた。
ふと、竹中からの文のことを思い出す。
空からの贈り物…
まさか、これのことか?
竹中半兵衛…悪趣味なことよ
…
!!
太陽が再び姿を現した、その瞬間。輪郭をなぞる線の上に閃光が見えた。
闇夜に輝く銀色の環
そうか、このことか。
幻想的な煌めきはあっという間に消え、太陽は徐々にまたその姿と光を現した。
―
それからさらに数日後、何をしに来たのか、竹中半兵衛が目の前にいる。
豊臣の名代として参上したというが、見え透いたものである。
「ところで、贈り物は気に入ってもらえたかい?」
「なんの話だ。用が済んだなら去れ」
「見てくれたんだね」
「日輪が欠けていく様など、見たくもないわ」
「でも、美しかっただろう?」
「…」
「あの太陽の環を、君に捧げるよ」
にこりとこちらを見上げる、その顔が憎めないことが悔しい。
「貴様はっ…そんな話をしに来たのか?」
「ふふ…」
「なにがおかしい」
「いや、君でもそんな顔するんだね。それが見れただけでも来たかいがあるというものさ」
「…っ!!竹中!!」
動揺が思わず顔に出た。取り繕うとしたが、時すでに遅し。
「さて、名残惜しいけど、今日のところはこれでお暇としよう」
「ふん、そうするがいいわ」
「そうだね。次は形のある環を贈るよ。待っていてくれたまえ、元就くん」
「いらぬわ、そんなもの…」
つい、と膝を立てると、半兵衛が眼前に迫る。
「この可憐な指に似合うものを誂えよう」
左手を取り、軽く指をなぞると、薬指の付根に半兵衛は恭しく口付けをした。
「物好きな男だな。それも策のうちか」
「君を相手に謀るなど、おそれおおいことだよ」
「ふん、買いかぶりを…」
そっと手を離すと、半兵衛は後ろに下がり深々と頭を下げ、去っていった。
半兵衛の足音が聞こえなくなったあと、自分の左手を眺めた。
唇が触れたところがじりじりする。
「我としたことが…」
つぶやきながら、薬指の付根を唇で押さえた。
「せいぜい、期待しておるぞ、半兵衛…」
―終―
20090722
※初はんなり、的な!はんなり好きだなあはんなり!
日食きれいでしたね(^ω^)
かげつ
←[*][#] →
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!