なかよしこよし ●ふりむかないで ♀ 今日、政宗のところから発つ。 毎度ながら、別れ際に何と言えばいいのか、こそばゆく思う。 「世話になったな!」 「いつものことだろうが」 心中を悟られないように、精一杯明るく、平静な態度を装うのだ、お互いに。 そうしないと、いけないのだ…連れて帰れるわけでなし、かと言って、ずっといられるものでもないことはわかっている。 だから、女々しいことはしない、そう決めている。 「長居してたからな、おれのものも増えてきたな」 「そっちは?」 「あ〜、預かっといてくれよ。えと、こっちは…」 持ち帰る私物を選り分け、借りていた部屋を片付ける。 「んなこと、しなくても…」 「人様のとこだし、最低限はな」 ばたばたとものを片付けていると、ふいに背中に感触が走った。 「ん…どうした?」 「黙って」 政宗が後ろからしがみついている。背中に頭をごしごし擦り付けて、まるで猫みたいだ。 「こっち向…」 「ふりむかないで」 政宗が唐突に放つ。 そう言った声は震えている。 「今、ひどい顔してるから、見るな」 それを、涙声で言うのか。 しばらくの沈黙ののち、政宗が口を開いた。 「もう、大丈夫だ…引き止めてすまなかった」 「…」 前に回った政宗の手が震えている。 全然、大丈夫じゃないじゃない。 「元親…?」 「女を泣かすのは趣味じゃねえんだ」 「あ…」 政宗の腕を引き、胸に抱いた。 「泣くなら、ここにしろ」 「っ…」 それが自分のせいでも、そうでなくても 「おれ以外のやつに、そんな顔すんなよ、な?」 政宗の隻眼からぽろぽろとこぼれる涙を指でぬぐうと、政宗は少しくすぐったそうに笑った。 「何言ってんだか…」 「釘刺してんだよ、おまえは無防備だからな」 「んなことねえ」 無意識なのだろうが、政宗がべったり甘えてくる。 「こんなこと、他のやつにするかよ…なあ、もとちか」 「ん?」 「引き止めて悪かったな。もう、出発だろ?」 「そうだな」 「…っ、んぅ」 どちらともなく唇を寄せる。 長いことくっついたままでいると、息が上がる。鼓動が早くなる。 「いっそ…」 「?」 「いやあ、何でもねーや。こんなこと考えても仕方ねえしな」 「え、」 おもむろに、帯の結び目に手をかけると、ゆっくり解いていく。 「お、い…」 「時間なら平気だ」 「か、っ片付けは…」 「もういいよ」 また来るんだから、どうせ、また散らかすんだから… ― 「またな、政宗」 「ん、達者でな、元親」 予定時刻を半日も遅れて、長曾我部一行は政宗のところをあとにした。 なんでも、大将の姿が見つからないせいで出航できなかったらしい。 まったく、とろいヤローだ… ! 遅れたのはほかでもない、自分のせいだったと今さら気付き、政宗は足早に自室へと向かった。 だから、ふりむかないでと言ったのに!!! その顔には、満面の羞恥と少しの満足がにじんでいた。 ―終 20090729 すごいバカップル的な…なんというか…スミマセンm(_ _)m わがままは女の特権 わがままに付き合ってやるのは男の甲斐性 的なw ちなみに元親は振り向いてはいない。無理やり政宗を前にした。 お付き合いありがとうございました(^ω^) かげつ ←[*][#] → [戻る] |