3
煌は今日、明け五つ半から、ここで待ち続けていた。
明け五つ半といえば、常なら乳母の雪(セチ)か、3歳年上の兄に起こされ、ようやく朝餉の卓に着いているような時刻。
なのに起きたのは六つ半で。
朝寝坊の煌にしてみれば、ずいぶんな早起きだった。
雪にはだいぶ不思議がられて、少し大人になられましたか?とまで言われてからかわれもしたが、拗ねずに頷いてその場は切り抜けた。
子供なのだ、と。
言われたようで、悔しかったけれど、そこで拗ねでもしたら、後の計画にさし障りがあると諦めて。
勉強をするからと、笑顔のまま部屋に辞去した後、ヨウと共に城をそっと抜け出した。
所詮、子供の浅知恵、おそらく雪には何かあると気がつかれてたろうから、自分を乗せて走るヨウをかなり急かした。
顔に当たる風が小さな自分には苦しかったし、見つからないよう路地ではなく、屋根を伝い飛んだからとても恐かったけれど、おかげで城下を抜けるまで誰も追い付いてはこなかった。
兄は怒っただろうか。
雪は心配のあまり泣いているかもしれない。
『煌さまは少し危険なお遊びが過ぎます』
これはずいぶんと前からの雪の口癖。
なんで?どうして?と尋ね、返答に詰まる雪の困った顔を見る度に、煌もまた困った顔をした。
*
※明け五つ半→午前9時
※明け六つ半→午前7時
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