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第二の人生


6

「聞きたい事は山ほどあるんだけど…取り合えず、ここどこ?」
「お妃サマの居たトコから随分東にある国よ。察してると思うけど、あたし以外が人間ばかりの、人間の王国」
「ああ、やっぱり人の国なのか…どのくらい遠いのかな。おれが居た所とは」

人間の王国というのはすんなりと納得出来た。
あの美しいクソガキの、魔族へ向けた言葉達が何よりの根拠である。
少なくとも自分に友好的な魔族達に居場所を与えてもらってる身としてのおれの神経は、ガキの口ぶりで簡単に逆撫でされたぞ。
おれの質問にロードは少し考える素振りを見せて続ける。

「そうね~ここまで…魔族でも地上から来れば五日やそこらじゃ無理な距離じゃない?」
「ふーん……えっ?」
「だってー魔王様の御領地の樹海を抜けて、それからずーっと影の無い砂漠や荒野を越えなければならないもの。それも拠点も置けない荒れた土地だし、着の身着のままじゃ無謀だわ。人間と魔族の膠着状態を維持するには、それなりの距離と障害が求められたのね」

薄暗い牢屋にロードの高い声が良く反響する。
具体性を持った返答にくらくらと目眩を起こしそうだ。
"魔族でも"云々って前提は、やっぱ人間だともっと時間かかるって事だろうか。
クソガキと兵士は、魔王が気付くのも時間の問題だと言っていたが、気付いたとしてそれだけ日数が必要なようだ。
自力では帰れないって事だけは、まず間違い無さそうだ。

「ん…待てよ、そんな遠いのにおれってどうやって連れてこられたんだ?まさか何日も気絶してたんじゃないよな」

気を失う直前の記憶はいつもの寝室で、赤い円形の、俗に言う魔方陣みたいなやつが浮かんでた事。
それが迫ってきた所でブラックアウトして、目覚めた時にはこの国に居たのだ。
数日間も気絶していたなら、さすがに体が違和感を覚えるだろうが、それも無い。
おれの疑問に、ロードは後方の召喚師へと顎をしゃくってみせた。

「ルームは使い魔の召喚以外にも色々出来るのよ、ショボいなりに。あんまり大きなモノは無理だけど、お妃サマ程度の体積で大人しいモノなら空間移動も苦じゃないの」
「く、空間移動……」
「もっとも、座標をしっかり把握するにはあたしが必要だし、アレは隙も多いから生き物相手じゃけっこー簡単に逃げられるんだけど。お妃サマはあたしの術でスグ硬直しちゃってー本当に運びやすかったよねー楽な仕事だったわ!アハハ!」
「あそ……………」
「お妃サマ攫うんだもん、失敗して消されるかもって思ってたのに~」

と、コウモリの羽を揺らしながら、ロードがケラケラと笑う。
鉄格子の向こうで、召喚師のルームがうんうんと頷いていた。
簡単に回避出来る…のに出来なかったおれはまたも無力感に苛まれる他無い。
加えて今は両手足を縛られ、まさに手も足も出ない状況なのだ。
しかもコレをやったのは、明らかにおれより年下で華奢な"人間"の子供だぞ…あああ悔しい!

深いため息で低飛行する思考を逃がしていると、ロードの人形のような小さな手がおれのデコを叩く。
ぺちぺち、叩かれまくって何だかむず痒い。
そしてロードは形の良いまぶたをくにゃりと歪ませ、下世話な笑みを作った。

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あきゅろす。
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