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第二の人生


7

「で、どう?王サマにお会いしたご感想は?運命感じちゃったー?」
「おうさまあ?」
「会ってないの?凄く性格悪いガキが居たでしょ。王サマは間っっ違いなくお妃サマに運命感じちゃってるわよ!」
「ガキ、居た……え、あれが王!?若すぎるだろ!」
「何だ知らなかったの」
「知るかよ。…………あ。おれ、王様の顔思い切り引っ掻いてしまいましたが…」

『打ち首』『獄門』『市中引き回し』
脳裏にさらりと時代劇お決まりの単語が流れていく。
しゃれになりません。
おれの告白にロードはより一層ご機嫌な様子だった。

「いや、あんな子供なのに王様…ああ、あのやたらと偉そうな態度はそれが理由だったのか…」

さっきはそんな事考えても無かったが、そういえば階級の高そうな先程の兵士もアイツにえらく従順だった。
まあ、口調もなんか殿様というか、一人称が"我"なんて奴は明らかにマトモじゃないな……。

「青い顔しなくても大丈夫よ。きっと目にいれても痛くないって感じじゃないかしら?もー王サマの頭はお妃サマでいっぱいで、それ以外何もないんだから」
「そうだ、それ、何で…?さっき初めて会ったのに、ずっと知ってるように言われたんだ。好か、れてる?…その理由も分からん」
「理由は知らないけどー。あたし達が雇われた時、王サマ今よりガキんちょだったけど、もうあんな感じだったわよ。ああ麗しい"卵"~~って。ハハハ!」

すっかり要領を得ないが、まあやっぱりここでもおれの価値は出生にのみ絞られるようだ。
魔族のみならず人間の王様も"卵"知ってんのかよ…一体何なんだ?
それにしても、

「どうでもいいけど、お前、王様相手にえらい不敬なヤツだなあ…」
「あんな奴に敬意だなんて冗談じゃないわ!」

ロードは鼻で笑い飛ばした。
笑顔で、相変わらず迷いの無い目を真っ直ぐ俺に向けている。
 
「あたしの王様はあたしだけど、ルームの王様があいつってだけよ」

上方からの啜りあげる音に召喚師を仰ぎ見ると、ボサボサの長い前髪の下から、涙かヨダレか鼻水か…いずれかの水分がボトボト落ちていた。

「……ありがと、ロード…………ぐじゅっ」
「あんたにもう少し根性があれば、今頃こんな所にいないわよ!モヤシ!」

ロードは呆れたような声だったが、その内二人は見つめ合い、微笑みを交わし始めた。
ああ…これはゴチソー様って奴なのか?
どうやら、二人は心底あのガキに忠誠を誓っているわけでは無さそうだ。
うん…うちの魔王さまの信仰されっぷり、やはりアレはアレで凄く異常なんだな。

長身痩躯の泣き虫召喚師と小さな女魔族の向き合う様子は、おれのささくれ立った気持ちを少しだけ癒していく。
生ぬるい気持ちでそれを眺めながら、知らず、おれは薬指のリングの感触を確かめていた。

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