第二の人生
5
あの男、魔王さまの着ているような純粋な色では無い色褪せた黒色。
ルーム、そうか。
おれが金縛りにかけられた現場で、この小さい女が呼んでいた名前だ。
「危害………加えたら、こっちが、やばい……」
ルームと呼ばれた男は、ぼそぼそと聞き取り辛い声量で相槌をうつ。
何がやばいんだ。
おれのがやばいに決まってんだろ…!
理不尽さに理性が崩れかけた、瞬間
「理解も納得も出来てないって顔してるわよ。わめき散らすだけなら赤ん坊にもできるわ」
女が口を開く。
茶化すような口調はそのままだが、強い視線に捉えられ反論を飲み込んでしまう。
そのまま睨む形で女を見つめる。
女はゆっくりと下降し、床に転がされたおれの傍らに、音もたてずに腰を下ろした。
紺色の瞳がまばたきして、邪気の無い笑顔を送ってくる。
「あたしはロード!そこの無能召喚師の使い魔やってるの」
「しょうかんし……?」
何のこっちゃ
「そぉ。アイツは人間、あたしは魔族。お妃サマとはあべこべの組み合わせね」
あべこべ
こいつらも、敵対種族同士のコンビ。
「手は貸せないわ。だけど、共感はちょびっとしてるのよ。お姉さんに何でも聞いてちょうだい」
ふんわり笑った女、ロード。
その笑顔に、言葉に、単細胞なおれはうっかり頷いてしまった。
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