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第二の人生


6

東の白城が宵闇に包まれた頃、城下街の戸口は早々に閉ざされ、自重された小さな灯火が転々と浮かんでいる。

反して煌々と松明に照らされた城の核の一室。
国王直属の護衛部隊指揮官である騎士は、目の前に広がる光景に茫然自失に目を見開いていた。


「…そ、その御顔は一体………」
「何、多少手を焼かされているだけだ。我が煌めきは素直ではない」

普段御簾越しに見る事の多い主君の素顔は、十三の年相応に柔らかく笑んでいる。
年齢にそぐわない精神の成熟に惹かれながらも内心で危惧していた騎士にとって、それは喜ばしい事。
しかし、少年王の頬に走った赤いミミズ腫れを喜べる道理は、無い。

主君の言う“煌めき"が指すのは、報告のみ聞いた“魔王の伴侶"だと容易に予測出来た。
謁見の赦しに足を運んだばかりの騎士は、まだその姿を見て居ない。
王の美しい絹の肌に走った赤味に、自然と騎士の表情が苦々しく歪む。

「捨て置けません」
「あれに触れてみよ。我が許さん」

一刀両断に返ってきた主の冷えた声音に、息を呑む騎士。


「しかし、」

言い淀む家来に、極寒の視線での王の追撃。
次の言葉を飲み込んで、騎士は頭を垂れた。
形式通りの謝罪に、王は頷く。


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