高銀(短編)
貴方の香りを下さい
隣で気持ち良さそうに眠る超絶倫野郎に俺は溜め息を吐いた。
そして脱ぎ捨てられた着流しを見つめ、ふと思い付いてしまった……。
〈貴方の香りを下さい〉
我ながらバカだと思った。
重い腰を上げ…
無駄に派手で、無駄に高そうで、無駄に綺麗な刺繍の高杉の着流しに腕を通す。
風呂に行ってから…と思ったが、高杉が起きてしまったら何を言われるか分からないから今のうち、高杉が静かに可愛らしく寝てる間にしてしまおう。
肌に身に付けるとわかる、この高級感!
そして大好きな高杉の香り。
煙管と何かの香の香り。
あぁ…良い匂い。
帯も締めて、裾を手で持ち鼻に当てる。
ヤバッ…俺今ただの変態じゃん!!
少し丈は合ってないが、まぁ気にしない。
高杉…
高杉高杉高杉高杉!!
本人を目の前にして、彼の服の香りを嗅ぐとか…本当、今の俺の姿を誰にも見られたくない。
けど…ちょっとだけ、
あとちょっとだけこうしてたい。
くんくん、と着流しを嗅ぎながらうっとりしていると聞きたくもない笑いを噛み殺した声が聞こえる。
「何してやがる。銀時ィ」
「んげっ!!!たたた高杉さん起きてらっしゃるの!?いつから」
「てめェが俺の着流しに腕通してる辺りから」
「ほぼ全部じゃねーかぁぁ!!!あーくそ恥ずかしい。」
脱ごうとすれば、後ろから高杉に抱き締められた。肩に頭が乗せられ、至近距離で着流しと同じ香りが鼻をくすぐる。
「嗅いで…どうするつもりなんだよ?」
「そっ…それは……」
ドキドキと高鳴る心臓。
高杉は静かに俺の言葉を待っていたが、クツクツと笑いながら耳元で言った。
「やっぱテメェは白が似合うぜ」
最後に頬にキスを落として高杉はまた布団に横になった。
どんたけ眠いんだよ……
『嗅いで…どうするつもりなんだよ?』
「お前の…香りが欲しかったんだ」
いつも近くに居ないお前。
会えてもたかが1日。
だから会える日こそ、思う存分高杉の香りを嗅いで高杉を感じてたいんだよ。
わかるか高杉……
わかんねーよな。お前にはさ……
高杉の髪をゆっくりと撫でていれば、眠ったと思った高杉が手を大きく広げた。
そして…
「んなモン着なくても、俺とくっついてりゃァ香りは付くだろうが」
「…はぁ?」
「だから……ちっ。来いよ」
強引に高杉に抱き締められてそのまま布団に!!
高杉の着流しに高杉本人の香り。
ヤバイ…高杉酔いしそう。
良い意味でな!?
いっぱい高杉の香りが俺を包んで、俺はコイツの胸元にぎゅっと頭を押し付けた。
「高杉の香りがいっぱい…好き」
「はっ!テメェは犬かよ。俺ァテメェの匂い…嫌いじゃねェぜ」
今日の高杉は機嫌が良いらしく、俺の髪をすいたり何度も何度もキスを交わした。
いつも気付いたら万事屋から高杉の姿はない。
だから…
俺が2度目に目を覚ますまで、貴方の香りで包んで下さい。
「高杉…」
「なんだ」
「何でもねーよバカ!いつでも…銀さんは暇だからな!と、特に金曜は神楽いねーし暇だから」
「っ……ぶっ!あはは」
「なっ!?なんだよ!何笑ってんだ」
「いや、な…ククッ。奇遇だなァ俺も金曜は暇だ。いや、暇を作らァ万斉に頼んで」
「?」
完、
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