短編
6
「俊!お前いつの間にこいつらと知り合いになったんだよ!?」
今ままで必至になってこいつを隠してきたのに!!
こいつの魅力を知っていいのは俺だけ
こいつと話していいのも俺だけ
こいつを見ていいのも俺だけ
・・・だった筈なのに!!!
今までの俺の懸命な努力はなんだったんだ!!(注:していません)
等と俺が心の中で悲鳴をあげていると、俊は更に追い討ちをかけてきた。
「えぇっ・・と、1ヶ月とちょっと前くらいかな。丁度夏休みが入った頃だよ。」
そんな丁寧な説明なんていらねぇ――!!
あぁぁぁぁこんな事になるなら親父を気絶させてでも、行くんじゃなかったぁぁああ!!!
自分で聞いておいた事は棚に上げて更に心の中の押し問答は続いていく柳。
「まだ始業式まで時間あるから柳も紅茶飲む?僕入れてくるよ」
「あ・・あぁ・・・頼む」
先程入れた紅茶をケーキの横に置いて再び給仕室に戻る俊。
もちろん、おんぶお化けの書記も連れて
俊がいなくなって再び静寂が戻るが、俊がいないこの瞬間を逃す柳ではなかった。
「お前ら俊には手を出すなよ!!」
まだこいつらの気持ちは分からないが、明らかに俊に好意を持っている事は確かだ。
こいつらは今まで家柄のせいか、
寄って来るのはお金や権力に目が眩んだ心根が腐った奴ばかり。
そんな環境に置かれたこいつらは見事、極度の人見知りになってしまった。
類は友を呼ぶとは良く言ったものふだが、生徒会はまさしく人見知りが集まった人間不信集団なのだ。
そんなこいつらはこの学校で置いても、その顔と頭と家柄の良さから、
親衛隊も入学したその日に出来上がり皆から一目置かれる存在となった。
おかげで寄って来るのは本当の自分を見ようともしない連中ばかり。
軽く人間不信に陥っていた生徒会基 人見知り集団は
仕事以外で他の生徒と一緒にいる事は殆どといって良い程無かった。
だからこそ、生徒会全員がたった一人の人間に惚れ、毎日のように追い掛け回していたのは非常に喜ばしい事であったのだ。
これで生徒会も普通に高校生活を送れる。
親が見たら涙を流して喜んだであろう。
惚れた相手が、俺でなければ・・・
そう生徒会がこぞって惚れたのは、
親の勝手な都合で転校させられる事になり、中途半端な時期にやって来た転校生・東條 柳なのだ。
柳もいわば金持ち家族。
似たような経験がある為、生徒会連中が本気で人を好きになれた事は少なからず嬉しかった。
本当に・・・
・・・・自分でさえなければ・・・
俺は男がダメだと言う訳ではない
じゃぁ何故?
そう聞かれると答えは只一つ!
自分にはもう伴侶(未定)がいるからである!!!
自分の伴侶(まだ言うか)の俊はとにかく可愛い!
そりゃあもう、世界一いや宇宙一可愛い!!
顔は平凡な感じなのに笑った顔に含まれる幼さが俊の可愛さを一段と引き立て
目は濁りがない綺麗な黒い瞳
身長も平均高校生男子に比べると少し小さめで上目遣いはそりゃあもう半端ない
何処までも俺を魅了してやまない俊。
その俊のおかげ?か、今は少し状況が変わっている。
生徒会連中が俊と接触したのだ。
そして今のこいつらの俺に対する態度がそっけない・・・
というか俺に全く興味がなくなっているのは本当は喜ばしい事・・・の筈なのだ。
だが、その原因を作ったであろう犯人が俊ならば話は別だ!
今の生徒会を見ると明らかに俊に好意を持っている事は確かだ。
俺の恋はこれが最初で最後だと確信している。
なんたって今まで一目惚れなんてした事がなかったからな!
だからこそ例え相手が生徒会でも俊は誰にも渡せない
いや 渡さない!!
だからこそ今からでもこいつらに牽制しておかなければならない。
「俊は俺のなんだからな!!!」
自分なりに鋭い目つきで睨んだ。
これで少しは効果あるかな?
なんて思って少しスッキリした俺
そんな俺は世界一の大間抜けだと次の瞬間分かる事となった。
頼むから俺の恋路を邪魔するな
[2012・2・17]
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