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第十一話‐壱
灰刃坊の邪悪な剣




「とーった!」

「負けた、阿呆!競争ではない!」

「お、見て邪見様。殺生丸様が言った通り、本当に鬼が死んでるー」

「おー、一体誰が…」

「犬夜叉だ」


二人が振り向くと、霧の中から殺生丸がゆっくりと現れた。後ろから猫芽も続く。


「最も…、奴も無傷では済まなかった様だがな…」


そう言うと、死んでいる鬼の角を掴み頭を持ち上げた。途端りんが叫ぶ。


「(臭う…この鬼の牙……鉄砕牙の臭いがこびりついている…。思った通り…この牙は鉄砕牙を噛み砕いた)」


そのまま頭を担ぐと、来た道を戻る殺生丸。


「行くぞ」

「ってそれ…、持って行くんですか…!?」

『あーやだやだ気色悪い』

「きゃーきゃーきゃー」

「黙れりん。…五月蝿い」

「はいっ」





――所変わってここは見るに薄気味悪い場所。妖怪の骨が辺りに散らばり、緑色の池がふつふつと気泡を吹いている。


『…うえー』

「先程からうえーうえーと。文句ばかり言うでない!」

『黙れ邪見。…五月蝿い、なーんつって、っ!!』


目の前に鬼の顔が現れ、声にならない声を上げた。


「これから一言も喋るな」




やがて一つの小屋にたどり着いた。そこには、一人の男が酒に溺れて寝転がっていた。


「誰だてめぇ」

「貴様が灰刃坊か。余りに邪な刀ばかり打つ為に、刀鍛治の師、刀々斉から破門されたそうだな」

「刀々斉かぁ。久しぶりに聞いても胸糞悪ぃ名前だ」


座った灰刃坊の目の前に、担いでいた頭を投げた。


「どうだ灰刃坊。その鬼の牙から刀を打ちおこしてみんか?」


それを聞き頭に触れるが、死んだ牙では録な刀は打てないと吐き捨てる。

それに対し、殺生丸は天生牙で頭を斬った。


「…!! こりゃあさっきと見違ぇるみてぇだ…!」

「灰刃坊教えておこう。この天生牙は貴様を破門した刀々斉の鍛えし刀。そしてその鬼の牙は、同じく刀々斉の鍛えた鉄砕牙を噛み砕いたのだ」

「すげぇぞ…!! こりゃすげぇ刀が打てる……!!」


そう意気込む灰刃坊は、含みのある笑いをした。


「打つのはいいが、そのかわりわしに見返りはあるのかい?」

「な、貴様は自分の身分をわかっておるのか!! 殺生丸様がわざわざ、」

「そうだなぁ。そこの姉ちゃんを貰おうか」


頭の後ろで手を組み、我関せずを通していた猫芽は思わず体制を崩した。


『はぁ?』

「よく見りゃあ別嬪じゃねぇか。酌でもして貰いたいねぇ」


いやらしく舌なめずりをする灰刃坊に、吐き気さえ覚えた猫芽は顔を歪ませた。


『誰がてめぇなんか、』


視線を感じて見ると、殺生丸と邪見がじっと見ていた。


『絶対嫌だから!!』

「猫芽…」

『邪見!! お前もう一生助けてやんないからな!!』


猫芽が文字通り邪見に牙を向いていると、殺生丸が灰刃坊に視線を向けた。


「これはやらん」

『え…』

「だが刀が出来終わるまで貸す。これでどうだ」

「チッ……仕方ねぇ」


猫芽は顔を引き攣らせながら、殺生丸達を見送るのだった。


「…頑張れー」

『…………!!(あの野郎ども…!!)』


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