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第十話‐壱
家族を失った少女達




あれから少して、りんは話せる様になりすっかり元気になっていた。


『――お前、名前は?』

「りん!」

『りん、か。あたしは猫芽!で、あそこのちっこいのが邪見で、白いのが、』

「殺生丸様!」

『そうそう。でも何で知ってるの?』

「あのちっこいのが言ってた!殺生丸様ー、殺生丸様ーって!」

『あはは!上手い上手い!』


きゃっきゃ騒ぐ猫芽とりん。手を繋ぎ歩く二人はもうすっかり仲良しになった様だ。


新たに加わった旅の連れは、あの人間嫌いの殺生丸が助けた子供だ。



「あー楽しそ……殺生丸様、良いので?人間の子供なんかを連れて」

「………」


遠巻きに見ていた邪見がもう何度目かわからない質問を投げかけるが、依然として黙秘する殺生丸だった。


「また無視された……(もしや殺生丸様はわしの事がお嫌いなのでは…)」


どんどんネガティブになる邪見は猫芽達を見た。


「何で猫芽様達は旅をしているの?」

『…それがね…』


猫芽はこちらに聞こえない様にりんに耳打ちする。


『殺生丸は強くなりたくて、弟の鉄砕牙が欲しいんだけど中々手に入らないんだよ。ぶくく、ざまぁ』

「へぇー。殺生丸様に弟なんているの?」

『もー凄いそっくりなんだよ。よく兄弟喧嘩もするし。ほら、よく言うだろ?似てる奴ら程喧嘩するって、い゙だっ!!』


頭に衝撃が走り頭を押さえうずくまった。涙を溜め見上げると拳を握り猫芽を見下ろす殺生丸がいた。


『何で殴んのさ!!』

「偽りを教え込むのは止めろ」

『偽り?あんだけ似ててよく言うあ゙だっ!!』


再び殴られた。


『お前!一応女に向かって殴るたぁ男の風上にも置けねぇな!!』

「ほぉ…?口も悪く品もないお前が、“一応”でも女と言うのか…」

『この野郎…!!』

「………あははは!」


睨み合う二人(といっても猫芽だけ)の傍らで突然笑い出したりん。二人はりんを見る。


「仲が良いんだね!」

『は、はぁー!?どこをどう見たらそう見えるの!?』

「だってよく言うでしょ?“喧嘩する程仲が良い”って!」


にこにこ笑いそう言うりん。反論しようと思うも、何も出て来なかった猫芽。

話題を変え様とりんを見ると、暗い表情をしているのが見えた。


『え、どうしたりん』

「…あたし、父ちゃんも母ちゃんもみんな死んじゃったから、こうやって笑うのも久しぶりだなって思って…」


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