夜も更け皆が寝静まった頃、猫芽は阿吽に寄り掛かり月を見ていた。
『……“よろしく”か…』
一人呟いて、夕方を思い出す。
結局、焼いていた肉は刀々斎が丸呑みしてしまった。そのあと、魚を取ったりして焼いて食べた。その間にもかごめは猫芽に話しかけてきた。
『(…確か村にいた奴も、あんなのがいた…)』
すると、冥加がぴょんと猫芽の肩に乗ってきた。
「殺生丸様とは上手くやってるみたいじゃの」
『そう見えてたら、お前は可笑しい。あいつには“強くなる事”しか見えちゃいないよ』
全く自己中な奴だ、と背伸びをする。
「わしは色んな血を吸ってきたが、お前の母君は親方様と同じくらい旨い血をしておられた…」
『………』
「……お前の一族は皆、使命を果たした素晴らしい一族じゃ」
『死んでちゃ意味ない』
「…………まだ親方様を恨んでおるのか?」
『………』
猫芽は無言のまま冥加を潰した。冥加はひらひらと地面に落ち、気絶してしまった。
『………この手で殺したいくらい憎んでるさ……のうのうと生きてる自分と同じくらい…』
「―――よっこら…しょっどっこい」
翌朝になり、刀々斎とは別れる事になった。
「じゃーの」
「おじいさん一人で逃げる気?」
「犬夜叉は宛にならんからのー」
「そんなぁ」
「ほっとけかごめ。こっちだってそんなじじいに用はねぇんだ」
刀々斎はポンと手を打つと、犬夜叉に歩み寄り鉄砕牙を返せと言う。
「お前に鉄砕牙は使えん。やっぱり叩き折っておく」
「ふざけんなこのじじい」
犬夜叉に殴られ、牛に乗り覚えてろー!と捨て台詞をはいてあっさり去って行った。
『じゃああたしもそろそろ行こうかな。じゃあね』
「え!もう行っちゃうの?」
「残念だね。もう少し話したかったのに」
と、女性陣が話している所に、ドドドドドと走って刀々斎が戻ってきた。
だが、その後ろから光が刀々斎に攻撃し牛もろとも吹っ飛んだ。
「!?殺生丸!!」
「そこに直れ!犬夜叉共々八つ裂きにしてくれる」
現れた殺生丸に、慌てて飛び起きた刀々斎は犬夜叉の後ろに隠れる。
「あ、あ、あんな事言ってる。どうする?」
「じじい、殺生丸に新しい刀打つ気ないんだろ?」
「ない」
「だとよ!俺も鉄砕牙の事で付き纏われんのに、いい加減うんざりしてんだ。そろそろ決着つけさして貰うぜ!!」
「安心しろ」
刀を抜いた犬夜叉に、襲い掛かる殺生丸。
その左腕は、竜の腕となっていた。
「それも今日で終わる…!!貴様に見えぬかぎり……“風の傷”が!!」
第八話
《鉄砕牙と天生牙》
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