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八つ当たり


廃寺へと着き、重苦しい空気の中銀時が起きぬまま、智恵の埋葬が行われた。


明るく元気でつぼが浅い智恵が死んだ事は、志士達にとって衝撃的だった。




そしてその埋葬も終わり、寺の中ではしん…と静まり返っていた。


「――……銀時の目が覚めたぞ…」


桂の一言に李野は立ち上がった。だが、高杉がそれを止める。


「…銀時には…拙者が説明してくる…」
「いや、…俺が行く。責任は俺にある」
「だァれにも責任なんかなか。それをゆっちゃあここまで連れてきたわしにも責任がある」


言われ腰を下ろした。それきり静かになった場に、襖の開く音が響いた。


「説明しろよ。何があった」
「銀時…」


現れた銀時はその場に静かに座ると、李野と高杉を見据えた。

意を決して口を開こうとした李野を遮り、高杉が口を開いた。


「天人が死体に化けてやがった。不意をつかれた俺を、智恵が庇った」
「なっ、ちが、」
「死んだフリするたァ、敵さんも躍起だねェ…」


自嘲する様に言った高杉を、銀時は睨む様な目つきで見た。


「…あいつは“親友を護った”っつったな」
「!」
「…ほんとの事言えよ」


高杉は舌打ちをし、目線を下に向けた。


「……拙者を庇ったんだ…背後から……死体だと思っていた…………すまない…!!」


頭を下げる李野を、無表情で見る銀時。


「あの時…!!気が緩んでいた…!!本当にすまない!!」
「…俺に謝ってもしょうがねェだろ。もう何も言うな」
「だが銀時は智恵を、」
「黙れっつってんのが聞こえねェのか!!」


凄まじい怒号に肩を揺らす李野。隣に座っていた高杉は、咄嗟に李野を背に回す。


「おい銀時、李野に怒鳴るのはお門違いだぜ?」
「うるせェ!!だいたい……お前らがいながら…!!」
「「!!」」


絞り出す様に言われた呟きは、李野と高杉の胸に深く突き刺さった。


そう言った途端、坂本が銀時を殴った。


「おんしゃーちと頭を冷やしてこい。辛いんはわかるがの、」
「てめェなんかにわかってたまるか!!俺は!!自分の女さえ護れなかった!!」


起き上がり坂本の胸倉を掴む銀時。


「おんしもわかっとらん。一番辛いんが自分だと思ったか。みんな一緒じゃき。わしもヅラも李野も晋助も、みんな辛いんぜよ!!」
「よさんか二人共!!」


つかみ合う二人を離れさせ様と桂は間に入る。


「……晋助…」
「…何だ」
「悪いが…少し一人になりたい…」


そう言って李野は、静かに外へ出て行った。




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あきゅろす。
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