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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編)

 6時起床。
 6時30分朝食。
 7時30分境内・道場内の中と外掃除(施設を借りる為、お礼を兼ねての掃除)。
 9時寺周辺のジョギング2キロ。
11時30分昼食。
12時30分周辺地域のボランティア清掃。
14時30分寺周辺ジョギング再び2キロを2周。
16時自由時間。
18時夕食。
19時入浴。
21時就寝。


「てな具合でやるから。みんな頑張って。因みに水分補給はこまめに摂取して、具合悪くなったら我慢しないで俺に報告。OK?」
 生徒達が「はい」と返事をし、春彦はうんうんと頷く。
「あ、今夜はみんなに楽しい催し物が在るから、楽しみにしててね〜」
「…なんか疲れるな。催し物ってなんだよ…まさか肝試しなんて抜かすなよな」
 ぼそりと剛が呟いたが、鈴はまさか〜と苦笑していた。剛はお化けが大嫌いなのだ。その昔、強くあれと父親の行動に兄と振り回された。獅子は我が子を崖から突き落とすと云うが…。
 ーーーあの糞親父は俺と兄貴をサバイバルだと青木ケ原に放り込み、挙句に東尋坊の崖を上がれと崖登りさせやがった…。思い出しても恐ろしい。そうでなくても、宿泊先が寺だなんてさい先不安だ。
「予定は以上だから、この後は自由時間! あんまり遠くには行くなよ〜あ、鈴ちゃんは迷子になるから特にね〜」
「…っ」
 鈴は真っ赤になって、笑う生徒達を睨んだ。
「もう、一言多い!」
 ぷいと横を向けば、剛がうんうんと頷いている。怒った鈴は剛の脚を踏みつけて散策へ出掛けて行き、剛は慌てて追い掛ける。社務所へ行くと、巫女さんが2人何やら話しをしながら、掲示板に書き込みをしている。
「こんにちは」
 鈴は挨拶をして、掲示板に書かれたものを見る。
「こんにちは」
 巫女さんがニコニコと返事をする。
「あの、うちの学校…生徒会が来るの?」
「え? ああ。他校となんかあるみたいね」
 掲示板には、鈴達の通う王蘭学園生徒会と、他校の名が記されていた。
 ーーー兄ちゃん何も云ってなかったのに。
鈴は踵を返して、寺の周りを散策しに歩いた。蝉の鳴き声と、暑い日差しにうんざりしながら、行き交う参拝者を眺める。
「パパ抱っこ!」
 小さな男の子が、父親に抱っこをせがむ。父親は仕方ないなと抱き上げ……。鈴はそれを眺め、込み上げて来た涙を散らすように瞬いた。そういえば小さい時里桜が直人にお膝抱っこされてて、鈴はそれが羨ましかった。階段を見付けて下り、大通りに出るとまた階段を見付けた。更に下りて行くと、水の音が聞こえて来る。
「水の音?」
 車の音で気付かなかったが、どうやら滝が在るようだ。
「り〜ん」
 後方からまた剛がやって来る。
「滝が在るみたいだよ?」
「お前途中から居なくなるなよな。うわ、マジ水の音!」
 剛が鈴の手を掴んで走る。見えて来たのは豪快に流れ落ちる滝飛沫。その少し離れた場所で子供達が水遊びをしていた。
「すげー!! 龍神の滝だって」
 はしゃぐ剛に鈴は笑う。マイナスイオンが、暑さで火照った肌に気持ちがよかった。水の中を覗けば小さな魚が泳いでいる。
「うわっ!」
 剛が脚を滑らせて、尻餅を着いた。
「大丈夫!?」
 剛は「痛〜」と云いながら、濡れた尻をさすっている。
「濡れてて危ないよ。水から出よう」
 鈴はずぶ濡れになった剛と、一度宿泊先に戻ると生徒達に訊かれ、事情を話せばゲラゲラと笑われた。
「楽しそうだね、どうしたの? 剛君」
 ひょっこり顔を出した春彦が、ずぶ濡れの剛を見て片眉を上げた。
「滝を見付けたんだけど、剛が脚滑らせて」
「どれ、怪我しなかったか?」
 春彦が剛の前に屈んで、脚の具合を見ようと触れた刹那、剛はビクッと腰を震わせて真っ赤になった。
「だ…大丈夫だ」


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あきゅろす。
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