天使の力
ヴァリアー編5
「ハッ」
自宅の裏の道場にて山本は静かに精神統一を計り鋭く周囲を見渡し刀をふるう
ザクッザクッザクッ
彼を中心に取り囲むようにおかれた練習用の丸太をきれいに輪切りにすると刀を収めていつものやわらかい瞳で背後に声をかけた
「あ〜ばれてたか、なかなか器用じゃねえか〜俺と違ってよ」そっくりな笑みを浮かべて入ってきたのは彼の父親、剛。
「えへへ、そーか?ところで親父なんか用か?」
「お前にさ教えてやろうと思って」
「えっ?」
持ってきた皿を置いて何処からか刀を取り出す父に息子は静かに息を呑む
「最強無敵の剣術“時雨蒼燕流”の剣をな」
■□■□
静かな山のなかに焚き火の煙はよく目立つ。そこはツナたちの修業場所だった
近所で修行していた獄寺に師のシャマルを交えて遅い夕食としていた
誰もが空腹だったらしく無言で己の腹を満たしていたが綱がふとみなに声をかけた。
「ねぇ、結局のところ春璃の過去って何?」
もっともといえばもっともな問いだろう、春璃に関しての情報は「凄腕の忍」「部隊を率いてる」「ディーノの妹」「キャッバローネが実家」有益なものはこれほどしか彼の手の中にはないのだから、それにスクアーロと呼ばれた白髪とも知り合いらしいし、あの取り乱し気にならないわけがなかった
「あいつの泣いた顔、怒った顔、眠った姿を見たことあるか?」突然シャマルが突いていた揚げ物を戻して綱をまっすぐ見つめた
「え?」
「隼人もだ」
「…ない」「俺も」
二人が訳が分からないと言うような顔で答えればシャマルはため息をもらした
「あいつの過去は相当後ろ暗い。今のお前等には聞かせても悲しい思いをさせる…っとでも思ってるんじゃねーか?」
「そんなこと…」綱は大きな瞳を悲しみを写し獄寺も悲しそうだ
「それにお前等、まだ弱い。あいつの悲しみを背負えるくらい強くならなきゃな…それに関しちゃあの二人が一歩リードか?」シャマルがニヤニヤしながら投げ掛ければリボーンも同じ顔をする
■□■□
「…」
「…なんの用だ」
鮫と闇色の猫はホテルの最上階で静かに睨み合った。異様とでも言うような張り詰めた雰囲気にダリアは生唾を飲み込む
「久しぶり」
「…」
「…用件はすでにおおよそわかってるんでしょ」
鮫は少し黙ってから肯定する「あぁ」
「ならば「無理だいくらテメーでもな」」
両者は再び黙り込んだ
「ペテロは今なイエスが連れてかれてよ困ってんだ」鮮やかな銀髪をなびかせながら笑む。
「大変ね。祭司長にでも捕まってなきゃ良いけど」零乃が笑みをかえせばまったくだと春璃も頷く
「一応は祭司長に従った振りしてるらしいが…イエスも半狂乱だ」
「そう…。ユダが消えないかぎり大変ね」
春璃は苦笑を浮かべスクアーロも肩をすくめた
「う゛ぉぉい熱心党の奴なんかは町の奴に罪を着せて町の幹部の奴の中で“一番弱いの”から殺そうとしてるぜ」少しだけ春璃の眉が動いたのを気付かぬ振りしながら零乃が口を開く
「大丈夫よきっと。町には“アテネあたりから自警団”呼んでるから」
「う゛ぉぉい、じゃあアテネは敵襲されたら大変だな…」二人が目を見開くのを見つめながらスクアーロは立ち上がった
「酔いが回りすぎたな…喋りすぎた。寝るから帰れ。それからダリア片付け頼んだ」じゃあな…右手を挙げてスクアーロは扉をくぐろうとするが立ち止まり
「“自警団長”は仕事をすればいい。弟子に戻る必要はない」今度こそ扉の中に消えていった
「??」
意味がわからず頭を捻るダリアに苦笑いをして春璃と零乃は部屋を後にした
「相変わらずあなたには弱い」
「だね。(…ありがとうスクアーロ)」
■□■□
ホテルを出ると時は既に夕暮れを迎えている春璃達はケータイを取りだし連絡をはじめる
「アレを止めろッ!!」
ケータイが繋がると同時に春璃は怒鳴り付ける
「本当ですか。ありがとうございます…はい。」
零乃はどこかに電話しケータイを切ると落胆した表情で零乃は首を振り春璃は小さく舌打ちをする
「とりあえず足止めを頼む。蓮太、紗良、諒太郎…面だけはバラすな…ああ、私たちで本人を確保する…それから蓮太…頼んで良いかい?」ことこまかに指示を出すとケータイを切る
「綱宅はダメ、ケータイも繋がらない…ナナママンいわく“つなの修行?を見に行った”と…」
「ッ…ツナたち山にいる…ケータイも繋がらない…零乃」
「はい」
「全員を集めて救出に向かうよ」春璃は強く唇を噛み締める
「ランボが危ない」
■□■□
『猫は光を浴びすぎました
だから忘れてしまったの自
分が闇側であることを、自
分の所為でこれからたくさ
んの仲間が傷つくかもしれ
ないことを』
ケラケラと真っ赤な髪を振り乱して女は笑いました
「いやぁ〜ねぇ〜鮫ちゃん流石だわぁ〜あの人は真意で動いてないと気付くなんてぇ〜」鼻につくような甘ったるい声に男は言葉を返す
「…真意?」
「そーよぉーザンザスを動かしてるのぉ〜」男は思わず冷や汗をかく
「何のために…」
「決まってるじゃない〜“あいつ”の娘に…………………………」
真っ赤な髪の女は満面の笑みでナイフを放ち春璃の写真で敷き詰められたコルクボードに突き刺す
「すべてを味あわせるのよボンゴレにもキャッバローネにも」
「ッ!!!!」
男は静かに退出する
■□■□
「春璃様…」
ダリアは廊下に立ちすくむとかつて自分を救ってくれた少女の名を弱々しくつぶやいた
■□■□
はい。危険な薫り満載な(??)第5話です
ヴァリアー編はオリジナルに繋がるものだったりします…そう、オリジナル色はここからだいぶ強くなると思います
さてさて次回はヴァリアーと邂逅と春璃の修行withいつもの三人
かも…あくまで、すべて仮定です
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