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那智×慧   【氷の靴】



※注
シンデレラ、という表記が御座いますが、ツンデレラと読み間違えないようご注意ください。
(この注意書きって必要?不必要ですねすいません。)



【氷の靴】

ひとりで自分の部屋にこもって宿題を少し片付ける。
急に焦燥感に襲われ、自分の部屋から出る。
無意識に、慧と喋りたいと思った。

慧の部屋をノックする。
「なんだ、那智?」
ドアを開けた瞬間から涼しい一陣の風が吹き抜ける。非常に快適だ。
慧は、ベッドに寄りかかるようにして小さな本を読んでいるように見える。
「けーい、その本なぁに?」
こそこそとはしておらず普通に本を読んでいるし、慧のことだからいかがわしい本を
読んでいることはないと思うが興味本位で質問してみた。
「こ、これか。シンデレラ、という本だ。小さい頃那智がオススメしてくれた本なんだぞ、覚えているか?」
「う、うーん。忘れちゃったかな・・・」
実際は忘れてなんかない。慧との思い出はほとんど脳内に残っていて、忘れてなどいない。
そして今回のこと、童話についてはいろいろな事を――正しい事もちょっと違うことも含めて――慧に教えてしまった上、
その反応が忘れられないくらい可愛かったので逆に強く印象に残っているくらいではあるが。
結構昔の話になるような気もするので、慧はもう忘れてしまったかと思っていた。

「どんなお話なの、兄さん。おしえてよ」
「・・・簡単に言うと、
舞踏会に参加したお姫様は、王子様に一目ぼれをするんだ。そして王子様と姫の楽しい時間が過ぎていくんだけれども
お姫様には門限があって、夜12時までに王子様と別れなければいけなかったんだ。ふっと姫が時計を見たとき
時計はもう12時を周るか、周らないかというところだったから姫は急いで舞踏会の場から去るんだ。
だけど急ぎすぎていたせいで、階段に片方のガラスの靴を置き忘れてしまう・・・ってところまで
読んだけど、いまいちしっくりこないところも多いな。」
内心、ちょっと言ってることが違うような気もしたがそこは弟としての優しさでスルーした。
「ふーん・・・おもしろい?」
「そこそこ、面白いぞ。」
このいま目の前でシンデレラを熟読している高校生に、小学生の頃「小学生にもなって絵本なんか」と言われた
ことをさらっと思い出し、軽く吹きそうになってしまう。慧の方が面白い、なんて言ったら怒られるだろうけど。

「このあと、どうなるのか楽しみだな。」
このあとは簡潔に言うと王子様がガラスの靴を頼りに姫を探しあてて、ハッピーエンドだった気がする。確か。
また慧に目をやると、もう真剣に本を読み始めていた。

それにしても、この目の前で本を読んでいる慧は――可愛い。
そう、そんなおれの兄さん。いま目の前にいる通り。
だが1人になると、もし慧がいなくなったら、なんてことを考えてしまうこともある。
目の前に慧の笑顔を見れるとき、慧を抱きしめているとき・・・慧を感じられるときはたくさんあるけど
逆に慧がいなくなったら、と考えてしまうことも多々ある。
いつ、どうやって、なんてわからない。だけど・・・いつか来るのだ。
少し、少しと気付かないうちに消えていって。
毎日、ちょっとのカウントダウンのように。最後には、跡形もなくなるのだ。
それがわかっているから、おれは一分一秒でも長く慧と過ごしたいと思う。
そう、慧のシンデレラで言う「門限」が来て、もう会えなくなってしまう前に。
慧はいままだ、「門限」が過ぎたらもう会えないと思っているだろうけど、
そう、そのあとをおれが追っていけば、一緒にいることがまた出来るはず。
氷のように、すぐなくなるかもしれない手がかりを探して、溶けて消えてしまう前に慧を追いかけに行くよ。
そして、溶けてからも一緒にいたい。

存在を確かめるように、優しく顎を持ち上げて伝えるただ1行の言葉。
「慧、ずっと一緒にいようね」
「ああ、もちろんだ。」

それにしても、シンデレラの話をあのように解釈して、後々に響かないかと心配になったのはまた後日の話。

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20090820


人魚姫やら桃太郎のほかにもいろいろ間違ったこと教えてそう。
それにしても小学生の遊びがバーチャルFXってなんだよおまいら!←
か、かわいいなんて思ってないんだからね!←←

最後のほう乱文(^o^)/深夜テンション乙




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