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天慧←那智  【流れ星と共に】


【流れ星と共に】





慧より遅くに帰ってきたおれは、腹が減って冷蔵庫を開ける。
そして、リビングのテーブルに腰かける。
すると、乱雑に書き殴られたメモが。
―――「成宮のところに、勉強を教えにいってくる」

慧は優しいから、「勉強おしえて〜」って縋られるタイプなんだよな。
おれだって頭脳は負けてはない筈なんだけど、なぜか皆、慧に質問しにいく。
別におれは、慧に質問して、解決して、そして自分を高めることをしてもらうのに異論を唱えているわけではない。
むしろそれは、きみにとっていいことでもあるし、結果この学校のモチベーションを高めることが出来るのではないか、とも考えている。
だから別に、勉強することを否定するわけではないんだが―――
夜通しで勉強とは、如何なものか。
別に変なことを思っているわけでは仮にないとしても、普通夜通しで勉強なんてするか?
2、3時間集中してやれば、いいくらいだ。
なんなら毎日通うくらいのことで、睡眠時間を削ってまで勉強をしたいという熱心な生徒がいるのだろうか。
そして、その生徒はあの成宮で。
ありえるか、そんなこと、と思った。
勉強なんてしないで、ほかのことでもしてるんじゃないかって疑った。

時計を見る。もう12時を周るころだ。
こんな時間になれば、きっと夕飯なぞいらないとは思うが、
慧に電話をかけるための口実がほしかった。

プルルルルルル・・・・
呼び出し音が鳴り続く。慧は、出ない。
もしかしたら、もしかしたら未だ熱心に勉強を教えているかもしれない、
だから、おれの電話になんか気付かないのかもしれない。
3回、掛けてみて駄目だったらあきらめようと思った。
――だけどおれは結局、1回しか電話を掛けることが出来なかった。
もし慧が電話に出たとしても、嘘を纏った慧であれば意味がない。
そして18年も一緒にいるんだから、このおれが慧の嘘を見破れないはずはない。
だからもう1度掛けて、慧が出てしまったら、すべてがわかってしまう気がした。
それが、怖かった。

慧からいつ電話があるかわからないから、携帯を握ったまま布団に入る。
慧のいない布団は、こんなに冷たかったっけ。
いまの季節は夏なのに、こんなに涼しく感じていたっけ。
慧のいない布団は、こんなに広かったっけ―――
慧がいないだけなのに、おれが見る世界はもう別物のようだった。
いつも、あたりまえのように思っていたことがそうは思えなくなった。
そう思うと、自然に目から涙があふれた。

慧、寂しいよ。
慧の温もりをまた、分けてほしいよ。

まだ慧の香りが残っているシーツ。
スタンドには、慧が寝る前に欠かさず読んでいる本。
1人で寝るには、睡眠に導くことを妨害するものが多すぎた。

ああ、考えているうちに時計はもう1時を周り、月が高くなっている。
変わらない着信履歴。
早く眠って、考えることをやめてしまいたい。
そう思えば思うほど、おれは「眠り」から遠のいている気がした。

あれからいくらの時間が経っただろう。
意識が現実と非現実の狭間を彷徨う頃。
玄関のほうでガチャ、とドアの開く音がした。
いまの音でおれは、一気に現実に降り戻されたのだ。
だけどここで起きていては意味がないので、寝た振りをする。
涼しい風も通らない、ただ熱気を帯びた風が通り過ぎるだけ。
ああ、慧の香りは、しない。
慧の香りがほかの香りに染められているのだ、あの成宮の香りに。
慧はそんなことに気づかないとでもいうのか。
水を1杯飲んでから着替え、すぐベッドに入ってくる慧。
おれは、慧の香りに安心することを望んでいた。
だけどいま同衾しているのは成宮の香りに染められた慧だ。
この香りに、おれは狂わせられる。
何もなかったように、おれに背中を向けて睡眠をしはじめる慧。
「んっ・・・なりみ、や・・・」
なんだと思った。寝言であった。
夢にまで成宮が出てくるのか。
慧のことを愛しく思っていた自分が急に馬鹿馬鹿しくなった。
もう、こんなやつと一緒に寝たりはしていられない。

おれはベッドから飛び起きて、さっさと家を出る。
―――「あれ、那智、どうした」
呼び止める声が聞こえたかもしれない、
だがまだおれは夢のなかにいるのかもしれない。そんなこともわからない。
でも、どちらにしても慧の顔なんてもう見たくなかった。

こんな夜にはバイクに乗って、どこまでも、どこまでも行ってしまいたい。
そして誰かに気付かないうちに轢かれて、気付かないうちに消えてしまいたい。
慧は悲しんでくれるかな。たくさんの人に悲しまれなくていい。慧だけいれば・・・十分だと思ってた。
「だけど慧は、おれのものじゃない」
もう考えることはやめだ。夜空に瞬く星の最期を見届けながら、おれはもっとスピードを加速する。






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20090812


もてもてけいくん に しっとする いのせんとなちくん の
せつないかんじ と かっとう を かきたかった のだ。
幼稚舎風に読んでください(殴)
ドラクエ風でもいけます(殴)
それにしても精神的にやられてるので暗い話になってしまうorz







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あきゅろす。
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