那智→慧 【AROMA】 【AROMA】 丁度ぱらっと開いた本に ―――あなたは、愛す方ですか? それとも、愛される方ですか。 そう書かれていた。 俺は…どっちだろう、と思った。 即答など、できない。 それなりに女子からはモテないこともないとは思っていたが、自分が好きになった女子は、そういなかった気がする。 だけど慧には。 慧を、気づいたら好きになってた気がする。 いつからだろう。こんな気持ちにされたのは。気付かされたのは。 「那智、ここどうすればいいと思うか?」 「うーん、僕がやっておくね、慧は他の仕事を進めてて。」 完璧を求めている慧を助けるだけ。 慧にはどうせよくできた弟、くらいにしか見られていないのだろうな。 でも、いまの俺にはそれで十分なのかもしれない。 気持ちを伝えることで――もし同じ気持ちなら不安なぞ皆無であるが――慧の気持ちが今より遠く、遠くに離れてしまうかもしれないならば。 俺は、これ以上を求めない。 そして…この距離をずっと、保てるように。 それは、慧に迷惑をかけないことでもある訳だが。 その本の次のページには 愛されるより愛す人 そうやって自分を傷つけないような道を歩むのですか? そう、書いてあった。 慧を傷つけない為――それは気付かないうちの、自分を傷つけない為の行為だったのかもしれないな。 そう、書いてあった。 慧を傷つけない為――それは気付かないうちの、自分を傷つけない為の行為だったのかもしれないな。 少しくらい傷付けてもいいかな? 少しくらい傷付いてもいいかな? 答えはすぐに出るものではないけど、 いずれ出来る事ならば、俺は…君を手に入れたい? だから、もう少しだけ、待っていて。 ----------------- 20090705 [*前へ][次へ#] |