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慧×那智   【全てが嘘だというなら】



方丈那智――きっとまぎれもなく誰よりも愛しい、僕の弟。
物心がついたとき、もしくはそれ以前から那智は僕に対して、「大好きだよ」と伝えてきていた。僕も那智のことは嫌いじゃないから、それに応えるように、那智の指に触れた。だんだん指じゃ足りなくなって、もっともっとと求めた。


いくら兄弟とはいえ、越えてはいけないラインがあることは、薄々分かってはいた。ただ、あの頃はまだそのラインは現実味なんて帯びていなかった。


【全てが嘘だというなら】




「那智ー、朝だぞー」
その時だって、いつものように朝起こしに行っただけだった。それだけなのにいきなり手をとても強く那智の身体のほうに引き寄せられて、僕が那智のうえに乗るようなかたちになってしまった。下から見上げる那智の目は、微睡みの中に何かを孕んだ期待の目であった。
「ねぇ慧、キスしてよ」
キス…などというものを意識してすることは、今まで生きてきたなかで無かったような気がする。こんな空気の中で、どうすれば良いのだろうか。
戸惑う僕の視線を追いつつ、那智が呟く。
「慧からしてくれないなら、おれから罰ゲームをかけるよ?」
その悪魔のような顔に、僕はくらくらするほど翻弄されてしまうのだ。
(罰ゲームって何だろう…?)
時計を少し睨み、まだ時間があることを知ると、もっと那智といることが出来ると一瞬の安堵感、そして期待が僕のなかに共存する。
「罰ゲームって、なに?」
那智の耳元で、那智だけに聞こえるように低く囁く。
すると那智が僕の頭を急に抱えて、上唇を啄むようにキスをする。
目を閉じて、もっと――と望んだときに、那智は僕から離れていく。
「もっと、したい?」
そのこたえは間違いなくYESだ。
控えめに頷くと、
「態度で表さなきゃわかんないよ、兄さん?」
今度は僕からキスをした。軽く触れるだけの、キス――のはずだった。
だが、不思議なものだ。理性に歯止めが効かなくなってしまったのか、僕は那智の口内に舌をあてがう。
那智も負けじと舌を絡ませてくる。
卑猥な水音が、2人の行為をさらに実感させた。
那智の荒い息遣い、潤んだ瞳。
それを見たならもう僕に理性なんてものは残っていなかった。
那智が離れていく。そしてまたその挑発的な目で僕を見るのだ。
僕はいてもたっても居られなくなって、腰をゆるゆると回すようにに動かす。布団一枚の距離が、とてももどかしく感じる。
布団を剥がし、その綺麗な肩口を抱く。

那智が大好きだから、優しく包み込んであげたい。だけど、那智の色んな姿、表情を見たいから――壊したくも、なる。


最後に残った理性で、那智にごめんなさい、だけど愛してる、と呟いた。



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20091016





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