純愛小説 2019.1.20.12:45 肩のとこに、誰かがつけたビニル紐。 こんなのふさわしくない。昼休み、私は自分のセーラー服からリボンを抜き取り椅子にくくりつけ直した。 「うふふ……」 校則があるから、数分だけだ。 私じゃない誰かの雑巾を足に乗せたまま、ずっと彼は涼しげだった。 お弁当を食べながら、ときどき彼にあげた。 椅子だから、噛んだり舐めたりはしないけど、気持ちだけでもと、小さく欠片を置く。 「椅子……好きです」 喋らなくて動かなくて、だけど、いつもみんなを支えている。 会話なんか望まないから。 「明日は、ちゃんとしたリボン持ってくるね。」 椅子の声が聞きたくて、足をそっと引き寄せると、ガラガラと鈍い音を立てて歩いてくれる。 なんて言った? わからないけど、幸せ。明日は画鋲ももってこよう。 卒業したら、会えなくなるから、私がひっかいて、サヨナラを残すのだ。 [*前へ] |