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与えられる手の平



夕飯を済ませて、阿部は片付けまでやってくれると言った。

カチャカチャという皿の音を耳に入れながら溜息を吐く。

なんで、何も言わねーんだ。





















「‥‥花井梓さん」
「何だ阿部隆也くん」
「状況が把握できません」


俺に組み敷かれている阿部からは危機感の欠片も見付からなくて、少し、ほんの少しだけイラッとする。何余裕ぶっこいてんの。


「っ‥‥花井、何っ」
「何も教えねーで人ン家に住むつもりか?」
「それ、はっ‥‥」


久しぶりに見る恋人の肌にクラッとする。でも流されてはダメだ。阿部を流さなきゃいけない。



「言わないなら、知らないよ」
「‥‥、言うから、花井、やめ」


所謂“お仕置き”の時にだけ見せる笑顔を浮かべるとすんなり白状する気になったようだ。

‥‥そんなに酷いことしてきたつもりないんだけど。










「家出、してきた」
「うん」
「親、と‥‥喧嘩して」
「飛び出して来たのか」
「‥‥や、色々手続きしてから出てきた」
「手続き?」


向かい合って座って、話を聞く。手続きって何?と続きを促すと重々しく口を開いた。





「大学、辞めてきた」





驚愕。声も出ない。口を金魚みたいにパクパクと開閉するだけ。



何とか、振り絞った声で言ったのは。



「家に連絡入れろ」
「ヤダ」


間髪入れずに拒否られた。しかしこちらにも意地がある。




















この後約1時間を要して阿部を説得し、家に連絡を入れさせた。

電話している間ずっと俺の手を握っていた阿部を抱きしめて、落ち着かせる為そっと背中を撫でる。

それから、阿部の機嫌を直すのにまた1時間。




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